DATE:2009/07/30 Mexico - Playa del Carmen -
まるで鏡の中にいる。
ようだ。なんて中途半端な言葉ではなく、
本当の鏡の中の世界のように透き通った泉の中、世界は光に満たされていた。
洞窟にできた泉の中に差し込んでくる光は、
まっすぐに底まで白い光の直線を引いている。
真水で出来た泉は太陽の光を遮ることなく真っ直ぐに透き通す。
水中から空を見上げればプリズムのように乱反射した光が、虹色のドアを開けていた。
七つの海でもなく、何千メートルの深海でもなく。
ユカタン半島に作られた石灰質の泉の中。
そこは世界で最も美しい場所だった。今まで見た何よりも。どれよりも。
セノーテ・ダイビング。
そんな言葉を聞いたことがある人は少ないかもしれない。
ユカタン半島、つまりはメキシコの東に突き出たカンクンを含むこの辺りの地域は、
石灰質の土壌を持ち川を持たない。
全ての雨水は大地に吸い込まれセノーテと呼ばれる地下泉へと流れこむ。
そんなセノーテがユカタン半島にはいくつもあり、
そのいくつかはダイビングやシュノーケリングを楽しむことが出来る。
海水で出来た海とは根本的に常識が違う真水の泉。
透明度は少なくとも50メートル。
まさに遮ることのない水の中の世界が広がっている。
魚などはほとんどいない味気のない水の中だが、
そこから眺める光のショーは他では見ることの出来ない驚くべき美しさ。
スポットライトを浴びるように泉の中を泳いでいく。
ふと上を見上げると光の魔法のように虹色になった空が見える。
ぽっかりと空いた泉の入り口を縁取るようにまるい虹色が覆い、
天への入り口のように揺ら揺らと光を注ぎ込んでいる。
面白いのが水深15メートルほどになると塩水に切り替わることで、
浸透度の違いのため交わることのない塩水と真水の境界は、
「ヘリコ・ライン」と呼ばれある意味ではセノーテ・ダイビングの最も面白い体験でもある。
交じり合わない2つの水はまるで水と油のような関係。
その境界を蹴り上げると巻き上げられた塩水がぼんやりと視界を乱し、
まるでモザイクをかけられたように景色が様変わりする。
最初は戸惑う景色だが慣れてくるとそれが面白く
わざと水を乱してはその現象を楽しむ。
塩水は真水よりも保温性が高いのかその差が体感できるほど暖かい。
万華鏡のような世界にライトを照らし生ぬるい水の中を進んでいく。
体験したことのない異世界。かけがえのない物を発見した幸福感で満たされていく。
あっという間に2本のダイビングが終わったとき、
なんだかもの凄い世界を見てしまったようで、呆然とした。
世界はやっぱすげーね。
この旅で何度とつぶやいたその言葉をもう一度つぶやいた。
世界はやっぱすげーや。
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