2009年7月29日水曜日

世界一周(52)メキシコ/カリブの海と千年の遺産















DATE:2009/07/29 Mexico - Tulum -


まだ日も昇らぬカリブ海の海岸。

白い雲が朝日を隠していた。
それでも雲間から少しずつ光が漏れ出しあっという間に空をオレンジに染め、
ついには朝になっていった。

プラヤ・デル・カルメンのバスターミナルから歩き出し、
すぐにたどり着いたカリブ海の朝はそんな感じで始まった。


まったく無計画にこの町に来てしまったことを思い出して、
急いで町のwifiを探して周り適当な宿を見つける。

たどり着いたそこは久々のアジア的、じめじめとしたドミトリー宿。
ドミトリーだが値段も10ドル近く、
どうやら中米の中でもメキシコは物価の高い国らしいことがわかった。


そのままビーチでのんびりしても良かったが、まだまだ1日は長い。
そんな訳でここから1時間ほどの場所にあるトゥルム遺跡へと足を伸ばすことにした。


トゥルム遺跡。

この遺跡もまたマヤの遺跡の一つである。

この辺りの遺跡というとカンクンから訪れるチチェンイツァが有名だが、
このトゥルム遺跡は規模こそ小さいがカリブ海沿いに造られた唯一の遺跡として人気が高い。

観光案内所兼ツーリストポリスなんていうへんてこな人たちに道を聞き、
ミニバンに乗ってトゥルム遺跡を目指す。

このミニバンが今まで乗ってきた乗り合いタクシーとしてはかなり上出来で、
真新しい車体に車内はエアコン付き、さらに過剰乗車なしと、
メキシコはやはり中米の中でも抜きん出た発展をしていることを知る。
交通機関というものはその国の状態をかなり正確に映し出すものなのだ。


快適なミニバン、さらに快適な国道を走り抜けてトゥルム遺跡へとたどり着く。
やはりカンクン近くにある観光地だけあってかなりの人で賑わっている。

面白いのがアメリカ人が多く居るということだ。

あれだけ多くの人口に関わらずアメリカ人の姿は世界中でそう多く見ることはない。
唯一見たのはガラパゴス諸島ぐらいなものだ。
というわけで僕は勝手に彼らのことを「天然記念物」と呼んでいる。

さすがマイアミから2、3時間で来れるこの辺りには
アメリカ人も旅行をするということなのだろう。
中米に入ってからちらほらと見かけ始めたアメリカ人の姿は
カンクン付近になりピークを迎えるようだった。


チケットを買い整備された遺跡の道を歩いていくと、
石を積み上げられて造られた門へとたどり着く。マヤ遺跡への入り口だ。

それを潜り抜けると中には思いのほか広い遺跡が広がっている。

さすがにティカル遺跡と比べてしまえばその規模の差は歴然だが、
高い塔などはないものの、整備された公園のような遺跡がなんだか目新しい。

遺跡の中には多くの人がいてそれがなんだかテーマパークのような雰囲気にさせている。
あちらこちらでガイドの声が聞こえてくるのはなんだか久しぶりの出来事だ。

ガイドブックも持っていないので適当にふらふらと遺跡を歩いていくと、
突然に目の前が真っ青に染まる。カリブ海だ。

そこにあるカリブ海の色は朝、浜辺で見た色とはまったく違っていた。
カクテルのように混ぜ合わされた翡翠色の滑らかな海が空気を巻き込み白く濁る。

ベリーズで既にカリブ海などわかったつもりでいた。

が、ここにある海は圧倒的に美しい。

そんな海が千年以上の歴史を持つ遺跡と共にあるのだ。
風光明媚なんて言葉では物足りないほどの景色が目の前にある。

遺跡としては他に劣るかもしれない。
が、景色としてはティカル遺跡で見た地上60メートルからの景色にも勝るとも劣らない。

ここに遺跡を建てた人々はジャングルの中に遺跡を立てた人々とは、
なんだか根本的に気質が違っているような気もする。

もちろんマヤ遺跡と言ってもそれぞれの民族が影響を受けながら作り上げたもので、
マヤという言葉はその広い文化の輪を総括した言葉に過ぎない。
正確に言うと、ある時代の文化圏の名前と言うべきなのだろう。

だからこそマヤ遺跡それぞれにユニークな個性がある。
それを今、ここで身をもって実感しているわけだ。


遺跡からはビーチに繋がる階段が伸びていて、
そこから降りて皆はビーチで海水浴を楽しんでいる。

水着こそ履いていたものの特に準備をしていなかった僕は、
とりあえずカリブの海に触れてみようと足をそっと浸す。
意外と勢いが強い波はあっという間に足を飲み込み、去っていく。

遠くにはボートの姿が見え水煙を上げながら滑るように走っていた。
遠くに見えた雲が少しばかりの雨を降らし、真っ青な空を残していった。


僕はいまカリブ海の中にいた。

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