DATE:2009/06/01 Peru - Pucalupa -
うるせぇ。うるせぇ。うるせぇ。
各駅停車のバスの旅に慣れてはいたものの、
朝5時から始まるペルーの民謡にはさすがに耐え切れず、悪態が口をつく。
せめてロックやポップスならましなものの、
ボリビアやペルーのバスの中は延々とその国の民謡が流れ続ける。
最初のうちはもちろんその雰囲気に異国情緒を感じるが、
同じような音楽が延々と流れるのを聞いていると、さすがに飽きもくると言うものだ。
実際のところ本当に同じ音楽が流れているのだ。
どうやら国全体で10曲ぐらいの流行曲しかないようで、
どこに行っても同じ音楽が流れている。
湯水のようにリリースされる最近の日本の音楽シーンに慣れた身には、
正直、同じ曲、しかも民謡らしく同じリズムとメロディーが続くのはかなりしんどい。
しかし地元の人は、と言うとむしろ楽しんでいるようで音楽が止まる度に、
「ミュジカ!」と言って曲を要求し、僕はそれにまた渋い顔をする。
そんな地獄の民謡漬けが耳をふさいでも意味が無いほどの大音量で何時間も続いている。
きっと日本も数十年前はこんなものだったのだろう。
ウィークランキングなど必要としない美空ひばりの生きた時代。
バスに乗る大人も子供も同じ音楽を聴いている時代。
そんな時代に思いを巡らせたが、やはり朝5時からの音楽は耐えかねた。
いつの間にか悪くなり始めた道路の中、飛び跳ねながらただ音が止むのを待つのであった。
まったく眠れてはいなかったが、眠ることを諦めれば外には新しい景色が生まれている。
ジャングルの景色。
そう、緑の多い茂るジャングルの景色が窓の外には広がっていた。
高い木はあまりなく茂みのような風景が目の届く限り延々と広がっている。
時たま滝のようなものが見え、その内のいくつかは道路まで水浸しにし、
バスはゆっくりと水の中を浸りながら進んだ。
滝のせいなのか雨のせいなのか決壊した道路も多く、
土が流れ出たがけ崩れ間際の砂利の道を何度も何度も通り越した。
もうコートは要らない。
夜中、寝袋が必要なほど冷え込んだバスの中はTシャツでも蒸し暑いほどだ。
そういえばリマからジャングルがあるプカルパまでの道はアンデスを越えていく。
いつの間にか通り過ぎてしまった山々だが、ここを越える時にはいつも凍えるのだ。
アンデスを越えた先にジャングルがあり、そこを目指している。
同じ国の中でもこんなにも違いがあるのが不思議なことに思えた。
ジャングル付近の町はリマ辺りの町並みとはやはり変わっている。
まず幾つかの古い家は高床式の木造建築になる。
日本の昔の建築物とそう変わらないその家々の姿。
この辺りに洪水が多いためか、それともネズミの被害を避けるためか。
どちらかはわからないが、国を超えて共通する家のスタイルに少し親近感を覚える。
そんな家だが、なぜかオウムに「×」が上塗りされた絵が良く目に付く。
その他にもトラだったりとか、果物だったりとか幾つかバリエーションがあるのだが、
やはり一番多いのはオウムが3匹並んだ姿で、何の意味があるかはわからないが、
この辺り特有のものに見える。
オウムなどの希少品種の乱獲を防ぐ意味なのか、それ以外の意味なのか。
なんだかは判らないが道々に溢れるそのペイントは、何か特別な意味を持っているように見えた。
プカルパという町がこのバスの終着点だが、
そこに着くまでにはいくつもの町を通過する。
町になればさすがに高床式の家はなく殆どがレンガ作りの、
ペルーらしい青やピンクで彩られた家が並ぶが、
そこを走る道路には意外なものが走っている。
トゥクトゥクだ。
この辺りではモトとかバイタクとか言うのだが、
バイクの後ろに人の乗る荷台が付いたスタイルはタイのものとほぼ同じだ。
実はこのバイタク、チチカカ湖の辺りでもよく見かけたのだが、
クスコ、アレキパ、リマと都市部になるといきなり姿を消すのだ。
もしかしたらあの辺りの町の路地が小さ過ぎてバイタクが通れないのかもしれないが、
なぜか全国共通でないのが面白い。
ちなみにトゥクトゥク型のバイク付きもあるが、
インドのような人が自転車をこぐリキシャータイプも活躍している。
なので道だけ見ればオートリキシャーとリキシャーで溢れるインドのようだが、
ジャングルと言ってもそこはペルーであるため、
インドのような喧騒も汚さは溢れておらずまったく違った雰囲気がある。
プーノ、クスコ、アレキパ、リマ。そしてジャングルの町。
ペルーはその町それぞれに違った雰囲気を持っているのが面白い。
実際、先のバイタクのように交通手段も違うし、暮らす人々の文化も違う。
そんなペルーという国にいつの間にか惹かれている。
マチュピチュやナスカだけではない、いくつもの魅力がこの国にはあった。
だからこそいま僕はジャングルの奥地を目指しているのだろう。
この国を、そして驚きをもっと見てみたい。そんな思いが僕にはあった。
予定時刻よりも3時間遅れ。
ようやく着いたプカルパの町はもう既に3時をまわっていた。
今日はやっぱこの町に1泊することにしよう。
ダイレクトでさらにここから1時間ほどの
シャーマンが暮らす村サンフランシスコまで行くこともできたが、
21時間のバスの旅、ここで体調を整えてから伝説へと挑戦することにしよう。
それに・・・おなか痛ひ・・・。
なんに当たったのかはわからないがリマからずっとおなかの調子が・・・。
本当に呼ばれてるのか、アヤワスカに。と疑問が過ぎったがここまで来たら試すのみ。
意外にも大きなこの辺り1の都市プカルパの町の安宿に荷物を降ろし、
色々と制限があると言うアヤワスカの体験前に最後のビールを飲み干した。
さて、アヤワスカ。やってやろーじゃん。
強がりからか体調のせいか、それとも期待感からか。
なぜかいつもよりまわるビールの酔いに心地良く酔いしれた夜だった。
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