DATE:2009/05/24 Peru - Machu Picchu -
まだ誰もいない遺跡の中、鳥の声だけが生きていた。
そびえ立つ山で遮られた朝日はまだ、この天空の城をまだ照らし出してはいない。
何百年もの間、こうして在ったのだろう。
人知れず捨てられた幻の遺跡の発見前の姿を見たような気がし、
門をくぐったその先に見た只在る遺跡の姿にただ沈黙した。
ワイナピチュへとぞろぞろと向かう人たちを尻目に、
僕は朝の誰もいないマチュピチュの中を歩いてまわった。
日中は人であふれるこの遺跡の中も今は未だまばらな声しか聞こえない。
精巧な石組みは500年経った今もその姿を保っている。
崩れかけた一部の遺跡の跡だけに唯一その歴史を感じることができた。
まだ人が少ないからか逃げもせず鳥が石の壁の上で鳴いている。
何百年もの間、繰り返されてきた儀式のように鳴いている。
ふと影が横切ると小さな野うさぎが壁の上を駆け抜けていった。
マチュピチュの姿が見下ろせる少し高台に登った。
周りを囲む山から朝日のこぼれ日がすぅっと斜めに伸びている。
こぼれた日の光が徐々に角度を増していく。そして遺跡の先端から少しずつ影を生んだ。
朝日に染まる。と言うよりは元々あったモノが生まれ出るようだった。
そうやってマチュピチュの遺跡は何万回目かの再生を果たした。
生まれたての遺跡の中に僕はまた足を踏み入れた。
生き返ったインカの歴史は呼吸すら聞こえるような気がした。
0 件のコメント:
コメントを投稿