DATE:2009/05/22 Peru - Cuzco -
個人的には。だがクスコの町並みは中々だがそんなに気に入ってはいない。
もちろん真っ白な壁の町並みは美しいし、
上から眺めた瓦屋根の白茶けたオレンジの家々は確かに良いのだけれども、
なんだかやっぱり乗り気がしないというのが正直なところだった。
なんとなく僕はまだラパスの幻影を引きずっているのだなぁ、と思う。
あのごちゃごちゃした町並みが僕は大好きできっとそれは旅を始めたばかりの時に、
アジアを訪れて感じた刺激と似ているからなのだと思う。
だからなのか、既に南米の「コロニア風」という響きの町に飽き飽きしたのか、
こういったヨーロッパの香りがする町並みを見ると何故か拒絶反応を起こしてしまう。
それでもまぁ、クスコの町が美しいことが確かだし、
この町にしかない面白さがあふれていることは確かだろう。
クスコの家を見てまず驚くのが瓦を使っていることだ。
クスコの町を上から眺めたときにまず思い出したのがスペインの町並みではなく、
中国の麗江の町並みだったことが自分でも驚いた。
スペインの、アンダルシア地方のような白い家々。
そう言われてみれば確かにグラナダを思い起こさせるのだが、
何故かアジアの、それも中国という国を連想したのはきっとそれが瓦屋根だったからだろう。
中国とこの国との文化の関連はないと思うので、
これもまたヨーロッパからの伝来なのだと思うが、
思いがけずアジアの文化が現われてそれが少し可笑しくなった。
インカ帝国の首都クスコ。
それをスペインが征服後、破壊された町に築いたのが今のクスコの町並みだ。
インカ帝国の遺産もすべて壊されたわけではなく、
精巧な石積みの上にヨーロッパ風の建物が乗せられたなんともユニークな風情がある。
もちろん町を歩くのはどちらかというとスペイン系のペルー人が多いのだが、
しっかりと民族衣装を纏った人々も暮らしており、
定番通りお土産屋をのぞくとその姿を良く見ることができる。
この町で一番のお気に入りはインカ博物館だった。
何百年にも渡るインカの歴史がずらりと並べてあり、
これから訪れるインカの遺産の数々に、ただただわくわくさせられた。
この文化が破壊されずに残っていれば。
そう思ってしまうのもまた確かである。
博物館には今まで見たことのないユニークな文化が残っており、
町に出るとそれは欠片も感じることがないほど消し去られていた。
クスコの町は美しかったが、そこはまた廃墟でもあったのだ。
歴史が示すナニモノかを失った町に、単に美しいと楽しめない理由がそこにあった。
町の全景を見ようと坂の間に立てられた家々を抜けて高台へと出た。
坂道の間に立てられた家は真っ白な美しいものではなかったが、
そのところどころ剥げ落ちて土のレンガが見えた姿がこの町の本来の姿のようで、
階段を登れば登るほど消えたインカの文化に近づいているような気もした。
高台に立つキリスト像はリオの町を思い出させたが、
町の中に比べて観光客も少なくペルー人らしき人たちがちらほらといるだけだった。
ひょんな事で子供連れで来た姉妹(といってもおばさんだが)と仲良くなり、
高台の上での記念撮影大会。坂の上のクスコの町は眼下の町とは違う空気に満ちていた。
遠くまで続くクスコのオレンジ色のレンガの町をしばらく眺めた。
この町は確かに美しい。
青く澄んだ高地らしい濃いブルーと山と町のコントラストに素直にそう思った。
インカ帝国の頃、この町は。
ふとそう思ったが思い直した。
破壊もまたこの町の歴史なのだ。今の美しさをただ素直に受け入れればいい。
そう、この町は確かに美しかったのだ。
高台からの帰り道、町を見下ろすサッカー場でボールを追い回す人たちがいた。
天空の競技場の中で蹴り上げられたボールが高く高く空へ舞った。
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