DATE:2009/05/14 Chile - Arica -
一夜が開け、朝が来てもやっぱり僕はバスの中にいる。
27時間のバス移動とはこういうものだ。
退屈への無駄な抵抗はやめてただひたすらに外を眺めた。
相変わらず単調な道が続いているが、
唯一変わったのは外が砂漠の景色になったことだったが、
以前見たサンペドロ・デ・アタカマからの景色を期待していた僕には、
ただただ続く砂だらけの道にはそれほど興味をそそられず、ただ時間だけが過ぎていった。
やっと。やっとのことでチリ最北端、国境の付近の町アリカに着いたのは午前11時。
昨日の朝8時から走り始めて27時間。定刻通りのスケジュールにひどく感謝した。
このままラパスへ。
なんて事を考えていたのは昨日の朝のことで、
27時間もの間、バスに揺られてグロッキー状態の僕にそんな選択肢はちらりとも浮かばない。
明日のバスの時間と値段を調べて適当に近場のホテルを選び、
イースター島から数えて2日ぶりとなるベッドの上にしばらく身をうずめた。
1時間もゆっくりするとようやく何かをする気になり、
何かがありそうな町でもなかったがアリカの町を散策に出かけた。
アリカの町はけっこう大きな町のようでバスターミナルから、
町の中心までは2キロほど歩く。
その間特に何があるわけでもないが田舎の地方都市らしい商店町が広がっている。
そこに歩く人々はさすがボリビアとの国境に近い町だけあって、
以前ウユニに行ったときに見たボリビア人らしい民族衣装を来た人たちをよく見かける。
物価の安いボリビアから商売にでも来ているのだろうか、
みながみな大きな風呂敷のようなカラフルな布の中をいっぱいにして町を歩いていた。
そう言えばこの辺りの人々の顔も少しチリ人の顔とは違っている。
どちらかと言うと何人か会ったことのあるペルー人に近い顔だ。
この辺りの地理からしても戦争でペルーがチリに切り取られたという歴史からしても
それは至極当然の事なのかも知れない。
せっかく海岸沿いの町に来たのでということで海でも見ようと海岸に出る。
海沿いには市場がありカニやらウニやらがずらりと並べられている。
そういえばこういう食材はレストランではほとんど見ることはないが、
家庭では結構使われているのだろうか。
特にウニなんかは特大ジャムサイズのガラス瓶の中に、
これでもかというぐらい詰め込まれている姿をよく見かける。
日本の筏に入ったウニを見慣れている自分としては、
見た目的にはあまり美味しそうではないが確実に量はある。
そんなに日持ちする食材ではないウニを大量に使う料理はどんなだろう。
チリの知らざれる家庭料理を食べられないことが残念だった。
そのまま海岸沿いに歩いていくとテトラポッドが並ぶ波止場に出る。
この太平洋の先に日本があるのだなぁ、なんと感傷に浸り歩いていると・・・。
おぃ、、、なんじゃこのペリカンの大群は。。
驚くも驚く、ペリカンの大群がテトラポッドに群れているではないか。
ペリカンなんて動物園でしか見たことのない生き物が、
まるで公園のハトのように群れなしている。しかも町の中でだ。
そう言えば南米の漁港の近くには魚のおこぼれ目当てのペリカンが飛んでくる、
なんて話を聞いたことがあったが、こりゃ飛んでくるとかかわいい奴じゃなく「襲ってくる」の方が正しい数だ。
一匹一匹テトラポッドの先っちょにちょこんと立ち、
既に夕食は済んだのか毛づくろいをしたり欠伸をしたりと好き勝手に遊んでいる。
ペリカン。ペリカン。ペリカン。
最初は驚きと興奮ではしゃいでいたものの、これだけいるとなんだか気持ち悪い。
人間にも慣れているのか、嘗められているのか近づいてもこちらを見ようともしない。
国境の町、アリカ。思ってもいないところで驚きを見せてくれる町だった。
帰る前に夕食を済ませ小さなレストランの家族と仲良くなり、
教えてもらった酒屋で晩酌用のワインを買って宿へと戻った。
今日はチリ最後の夜だった。
アルゼンチンとチリ。
何度も往復したこの国もついに最後の日を迎えてしまった。
おかげさまで僕のパスポートにはこの国のスタンプが何個もある。
思い出してみるとこの国にいる時間は長いように思えるが、
どうしてだろうかイースター島を除きこれと言った思い出がない国でもある。
サンティアゴの町はきれいで過ごしやすかったし、
パタゴニアの町のまぁ悪くはなかった。
イースター島での生活は特別なものだったがこれは例外だろう。
バスやお店のサービスにおいて特に不満はなかったし、
南米において不満がないということはある意味ではもの凄いことでもある。
だがしかし。
この国にはあまり情を感じない。
今日でさよならとなる国だがそれに対しても、
何度も出国を繰り返してきたからだろうか特に感慨を感じることはない。
全てが普通。
この国を表すとそんな言葉が当てはまる。
特に突出した文化もなく経済もなく、不満もない。
変な話だが何もかもが「あたりまえ」にできない国の方が何かと思い出に残るものなのだ。
だからこの便利で不満のない国を思うと特に感慨が浮かないのだろう。
そんなことを思っていると「じゃぁ、日本はどうだろう」なんて疑問が沸いた。
今言ったこと全てが日本にも当てはまるのではないだろうか。
外国人からみた日本とはどんなものなのだろう。今更ながらにそんな事を思った。
ま、ともかくワインは旨いよね。
そう思い日本でのお気に入りモンテスのワインのボトルを開けた。
そう。何はなくともワインが旨い。それだけで十分なのかもしれない。
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