DATE:2009/04/21 Argentine - Ushuaia -
船と共に併走する影にしばし唖然とした。
マゼラン海峡を渡る僕らの船を歓迎したのは子供のように船と戯れるイルカ達の姿だった。
するすると水中を進む弾丸のような白い影がふと沈み込むと次の瞬間に水中を舞った。
そのイルカのジャンプが至る所で繰り広げられている。
いったい何匹いるのだろう、5匹では下らない数のイルカが飛び跳ねている。
僕は始めてみる自然の姿にただひたすらに感動するしかなかった。
ただ遊んでいるだけの彼らの姿が涙が出るほどうれしかった。
この海峡を始めて見つけたマゼランもまたこの景色を見たのだろうか。この歓迎を受けたのだろうか。
遠い昔に起きた出来事を思い、それが今もまた起き続けているのかもしれないと思い心が震えた。
そんな歴史的な海峡の旅はあっという間に終わりを告げ、
イルカたちもまた海の中へと帰っていき何処かへと姿を消した。
国境を越え、アルゼンチンに再入国を果たしたがこれといった変化はない。
大地は国境で途切れているわけではないのだ、それも当然かも知れない。
最南端の地の空はどんよりと低い雲が漂い、
紫色の薄い光が横から染み出すように地面を照らしている。
なんら特別ではない風景もその光を受けて幻想的な姿に変わる。
ぼんやりとしたその景色を眺めながらゆっくりと夜が来るまでバスの中でそれを見つめた。
夜8時ごろ。バスはゆっくりとウシュアイアの町へと停車した。
予定ではここでも日本人宿に泊まろうと思っていたが、
行き方もよくわからなかったので取り合えず適当なホテルで一泊して、
明日そこへと移動することにした。
相変わらずここも宿の値段は高く、うろうろと歩き回ってどうにか1軒の宿を見つけた。
サンティアゴの町を出てから20日ほど。
僕はパタゴニアの大地を南へと下り、ついに最南端の町へとたどり着いた。
ついに辿り着いたのだ。その事実がとてつもない達成感を感じさせた。
夜に吹く冷たいはずの南風は、
なぜかとても心地良く僕のそばを通り過ぎていった。
僕はいま世界の端っこにいる。
0 件のコメント:
コメントを投稿