2009年4月16日木曜日

世界一周(40)チリ/ただ1杯の為に







DATE:2009/04/16 Chile - Puerto Natales -


よくもまぁ、起きれたものだ。

遅刻ばかりしていた学生時代や会社員時代を思い出して、
なんだ意外とできる子だったんじゃん、と苦笑いをした。

早朝7時に出るバスに乗るために宿を出たのは6時ごろ。
起きだしたのは5時ちょっとで昨日寝たのは3時ごろなのでほぼ寝ていないということになる。
それにしては目がしゃっきりと冴えていたのは、キンとしたパタゴニアの空気のおかげかもしれない。
ともかくバスは僕を乗せて次の町、チリのプエルトナタレスへと走り出したのだった。

パタゴニアの大地はアルゼンチンとチリに分かれていて、
そこを旅するためにはアルゼンチンとチリの国境を行ったり来たりしなくてはならない。
チロエ島からバリローチェへ行く際に越えた国境を、今日もう一度またぐというわけだ。
そして南米最南端の町ウシュワイアに着く頃にはもう一度国境を越えアルゼンチンへと戻る。

そんなわけで僕のパスポートにはチリとアルゼンチンのスタンプがやたらと刻まれる事になる。
仕方のない事とはいえ、残り少なくなったパスポートのページには大ダメージだ。
なんて事を言っても仕方がなく、
果たして僕のパスポートには二度目のアルゼンチン出国スタンプと、
三度目のチリの入国スタンプが押されたのであった。
ちなみにやっぱりチリの国境らしくいくつかの食料が殉職したのは言うまでもない。
同乗していた韓国人はゴマ入りのふりかけを没収され憤っていた。チリの国境の食料事情は深く険しい。


バスで一眠りするか。

そう思って乗り込んだバスだったがちょうど日本人の女の子が乗っていて、
その子となぜか話が弾みあっという間にプエルトナタレスへと到着してしまった。
この後、サンティアゴへ向かうという彼女と同じ宿だった2人の日本人と一緒に、
そのまま宿へとチェックインして明日のトレッキングへの準備を始めた。

他の3人は全員、サンティアゴへの経由地であるため、
どうやらこの町から行けるパイネ国立公園でのトレッキングは行わないらしい。

他に宿に適当な人も見つからないため一人でのトレッキングが決定した。
どちらかというと一人の方が気楽でよいと思っていたので、望むところだ。



パイネ国立公園。
トレッキング好きのバックパッカーには有名な場所で、
パタゴニアに来たのもこの国立公園をトレッキングするため、という人も少なくない。

国立公園内には3つの大きな山といくつかの氷河や湖、
そして多種多様な自然が溢れている。

トレッキングのベストシーズンは1月から4月までで、
まだギリギリ間に合うとはいえ寒くなってきた今はトレッキングをする人も減っているようだ。
町を歩いていても旅人らしき姿はあまり見えないし、乗ってきたバスにも多くは乗っていなかった。

国立公園内はトレッキングコースが整備され、
中にはテントを張るテントサイトやレフリオと呼ばれる山小屋が置かれている。
多くの人々は日帰りではなくテントや食料を持ち込んで3~7泊ほどのトレッキングを行う。
ツアーなどではなく自力でのトレッキングだが、意外と多くの人がそれに挑戦している。
Wと呼ばれる公園内をWの字型に進むコースとサークルという公園を一周するコースが一般的だ。
それぞれにWが平均4泊5日、サークルが7泊8日ほどのコースとなる。
もちろん途中に食料の補給ポイントなどはないので、全てを持っていく必要がある。
幸いなことに公園内を流れる川の水は飲むことができるので飲料水の心配は要らない。
テントセットに寝袋、ガスコロンロ、それに食料といった準備がトレッキングの標準装備のようだ。


さて、そんなパイネ国立公園だが僕の予定はと言うと・・・なんと一泊二日。

そう聞いたことがない軟弱コースが僕のプランなのだ。

いや山登りは好きなのだがさすがに一人で4泊分の荷物を、となるとかなり厳しく
それに僕がこのパイネ国立公園に来たのはたった一つの目的だけしかないのだ。
それは・・・。


「氷河の氷でウィスキーを飲む」

ある意味でここパタゴニアを訪れたのはただこの目的の為だったと言ってもいい。
元々は旅中で再会した元の仕事仲間ゆきさんの受け売りだったが、
なんだかそれがとても素敵な事に思えて、いつの間にか自分の夢になっていた。

そんなわけでトレッキングを楽しむ他の旅人とは違って、
僕のパイネでの目的はウィスキー・オン・ザ・氷河なのだ。
誰が何と言おうと僕はこの為だけにパイネの山に挑む。

コースはバスで湖まで出た後にボートに乗って湖を渡り、
その後に氷河に向かって歩き出すだけだ。帰りは同じ道を引き返す。


さて、その目的のために必要なものは・・・ウィスキーのみ!

先ほど説明したトレッキングの準備などどこへやら。
テントなんて持ってくの重いし。という軟弱な理由でレフリオ(山小屋)への泊まりを決めている。
オフシーズン前というのも好都合で、通常予約が必要なレフリオの宿泊も、
この時期であれば何とかなるだろうという読みもある。
それにコストだけで言ってしまえばテントやガスコンロのレンタル料金とほぼ変わらないのだ。
もちろん4泊もすれば相当にコストは変わってくるのだが、
1泊それも1人なので複数人で割れるというテントのメリットが薄れてくる。
そんなこともあり、ほぼ手ぶらでのトレッキングにチャレンジすることにしたのである。



そうと決まればやることは唯ひとつ。

ウィスキーを探せ!だ。

という訳でウィスキーを探しに出たのだが、、、これが中々見つからない。
どれでも良いと言うのであればそこそこのものはあるのだが、
ここは人生何度とないウィスキーの大イベント、最高級のものを揃えたい。

そもそもウィスキーはそう飲むほうではないが、
知り合いと一度ウィスキーバーに行ってから好きな銘柄なんかも出来ている。

一番のお気に入りはボウモア、次いでラフロイグなんてのも良い。
バーボンはあまり好みでないのでちょっと遠慮したいのだが、
この町はなぜかジョニーウォーカーだらけで、なんと黒まであるのだが、
スコッチウィスキーは残念ながらあまりなく選べるほどはない。

ほぼ町中の酒屋やスーパーをまわり結局、唯一1軒だけ売っていたマッカランの12年ものに決めた。
1本約5000円。そーいやこの旅で一番高い酒かもしれない。
全ては夢のため、なんていいわけをしてちょっぴり贅沢をした。

急に振り出した雨にうたれ急いで宿へと向かう。
そう言えば天気予報は今週一週間はずっと雨を示していた。
つまりは天気待ちも意味のない状況で、どんな天気だろうが行くしかないのはわかっている。
とは言え、この寒いパタゴニアで雨に打たれてトレッキングなんて面白いわけはない。
ただ空を見て明日の天気が回復するのを願った。



宿に戻り今日もまた酒盛りをする。

恋の話。旅の話。そして明日の話。

旅人が集まればその話は尽きることなんてない。ただ時間だけがゆっくりと過ぎていく。



さあ。明日天気になーれ。

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