2009年4月8日水曜日

世界一周(41)アルゼンチン/アンデスを越えて







DATE:2009/04/08 Argentine - Bariloche -


10時半発のアルゼンチン、
バリローチェ行きのバスはあいにくの曇り空。

期待していた景色も曇り空のためか、
延々と牧場が続いていくだけでそれほどのものでもない。

時折、青空が見え光が差し込むが、
遠く見えると聞いていたオソルノ山は姿を現すことはなかった。

残念だが仕方がない。
これも旅という奴だ。

それにオソルノ山は昨日美しい姿を望むことができたし大してがっかりした気分ではない。



アルゼンチン国境に着くと、
まずは2回目のチリ側の出国スタンプが、
そしてさらにバスでしばらく進んで2回目のアルゼンチンの入国スタンプが押された。

チリ、アルゼンチン、チリ、アルゼンチン。

この辺りを旅しているとまるで夏休みのラジオ体操のように、
ばしばしとスタンプが溜まっていく。

そんなわけで少しばかり僕はパスポートの心配をしている。

このまま旅を続けていれば
いつかどこかでスタンプを押す場所がなくなってしまうかもしれない。

それはちょっとだけうれしい出来事だが、
パスポートの増紙をしなくてはならず少しばかりめんどうなことでもあるのだ。



いつものような荷物チェックはされず、
アルゼンチン側の入管を越えるといつの間にか空は晴れ渡っていた。

チリからアルゼンチンに抜けるには、
どこを通っても大概アルプスを越えていくことになる。

この国境もご他聞に漏れずアルプスの山道をがんがん進んでいく。

山などいまさら見飽きてしまってはいるが、
やはりこの辺りの景色は美しい。

そしてひとつのことに気づいた。紅葉だった。


いつの間にか季節は変わり始めていた。
夏だと思い込んでいた南米にも秋が訪れようとしている。

少し肌寒くなった空気は単に南下を続けているからだけではなく、
僕が地球を周るように季節もまた周っていた。


夏から秋になり冬になる。

そういえば季節の移り変わりを感じるのはこの旅で初めてかもしれない。
大概の国は季節が変わる前に国境を越えてしまったし、
それほどわかりやすい季節の変わり目は感じることがなかった。

季節が変わる。

そんな当然のことが長い旅の中、忘れ去られていた。


そう言えば今、日本は桜の季節なのだ。

いつの間にか日本の今を想像できなくなっていた事に驚き旅の長さを知った。

黄色く色づいた木の葉を見て、東京の桜を思うなんて。

黄色い木の葉を見て日本に残る仲間たちの事を思った。
僕抜きで桜の宴をするなんてどうかしてる。なんてことを。


地球の裏側にもまた季節が色づき始めていた。



アンデスの山の中、いくつもの景色が通り過ぎた。

黄色く色づいた木々。薄緑の藻をまとった枯れ木。
森に差し込む光と影の長さがまた秋を感じさせた。

時たま湖が顔を出し銀色の水面に秋の日差しがきらめいた。


バリローチェの町はそんな湖のひとつの湖畔に姿を見せた。

きっとあの町もまた美しい町だろう。

遠くに見える町をまだ山道を降りるバスの中で見て思った。
大きな湖の中にぽつりと生まれた町は景色に溶け込むように広がっていた。



バスターミナルにたどり着き、
さっそくいつものように次の行き先の情報を調べるも見つからず、
相変わらず観光案内所は看板だけで人が居らず、
しかたなしに市内バスに乗り込んで宿へと向かった。

バスから見る市内はやはりきれいな町並みで、
少し観光地化が過ぎる気もするがそれはそれで美しかった。


地図を頼りに宿に向かう。

すり鉢状の湖の湖畔に立つ町なので、
町全体がなだらかな丘のようなところに建てられている。

目当ての宿は坂の上にあり、
少しばかり階段を上らなくてはならなかったが、
逆にそのドラマティックな場所が気に入って、
きっとこの町が気に入るだろうという予感がした。



宿にチェックインして荷物を降ろし、
そろそろ夕日も沈むころだったがせっかくなので湖へと向かってみることにした。

端から端まで5キロもない細長い町並み。
湖に沿うようにすらりと伸びた街のためどこからでも湖へと向かうことができる。

湖では夕暮れを楽しもうと何人かの人々が
波止場に座ってのんびりとした時を過ごしていた。


高原の湖らしく、湖は透き通った青い色をしている。

穏やかに見えた湖もパシャリ、パシャリと意外と大きな波の音。
それに子供たちが遊ぶ笑い声が混じる。


しばらく風に吹かれ、そして宿に戻った。


久しぶりのアルゼンチンの風がとても温かくそして心地よかった。

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