DATE:2009/04/05 Chile - Castro -
朝9時にプエルト・モントで乗り換えたバスはそのままフェリーへと乗り込み、
久しぶりの船の旅を楽しんだ。
たった30分のその船旅だったが、
ここが島だということを示すには十分すぎるイントロダクションだ。
船がチロエ島へとたどり着くと、
「ようこそ!」とでも言うように曇り空から青空が見え始め、
雲は高速で流れてあっという間に青空へと変わった。
そのドラマのようなイントロの後には、
雨に濡れてキラキラと輝くのんびりとした田舎道が続いていく。
その輝きに僕は「赤毛のアン」のことを思い出す。
映画で見たカナダのプリンス・エドワード島の風景も確かこんなだった気がする。
そんな景色の中にはやはりかわいい小さな家が似合う。
黄色や水色でペイントされた小さなちょこんとした家が、
牧草地の中の丘の上にぽつりぽつりと建っている。
細くうねった道にはところどころ鳥小屋のような、
かわいい木のバス停が置かれ、
バスは時たま人を降ろし、時たま人を飲み込んだ。
のんびりとした牛が草を食み一日を生きている。
そんな景色の中を2時間ほど走ってチロエ島の中心地カストロの町へとたどり着いた。
なんだかこのチロエ島というのは乙女チックな場所なのだ。
そんなわけで適当に選び出した宿の部屋は、
水色の壁にフリフリのレースがついた枕という、
もう何十年も前のフランス映画に出てきそうな部屋だった。
汚れたバックパックを部屋に下ろす。
うわぁ、俺この部屋似合わねー!
二日ほどひげを剃っていなかったため無精ひげの28歳のバックパッカー。
なにもまぁ、こんな乙女チックな部屋を選ばなくても。。。
後から他の部屋を見てみたがどうやらこの部屋だけひときわ乙女な香りがする。
その中からこれを選ぶなんて何かの嫌がらせだろうか。
そんなわけでそのフリフリのレースに囲まれて、
28歳の男バックパッカーは居場所なくただ笑うしかなかったのであった。
30分もゆっくりするとなんだか居たたまれなくなったので、
急いで身支度をして町の外へと飛び出した。
が、町も町でやっぱり乙女チックなところで、もうやたらかわいい。
こうなったらもう開き直るしかなく、
僕は乙女の海へと沈んでいったのであった。
と、こうは言って見たもののカストロの町は案外楽しい。
丘を降りればきれいな湖が広がっているし、
その町並みも少女趣味ではあるがかわいくてほほえましい。
なんだかシルバニアファミリーにでもなってしまったようだw
湖をぺろりとなめるとやっぱり塩の味がした。
ここは入り組んだ入り江の一部なのだろう。
ここから入り江は太平洋へとつながっている。
ここはやっぱり島なのであった。
シーズンオフなのか賑わいを欠く湖畔のお土産屋を冷やかして、
一軒のレストランに入った。
5ドルもしないサーモンのフライを頼むと、
特大のサーモンが皿に乗せられて運ばれてきた。
チリはやっぱり魚がうまい。
ふわりとやわらかいサーモンにかぶり付くと、
あっという間に食らい尽くし、あとはのんびりとビールを飲んだ。
まったりしていると隣のテーブルのおっさんが話しかけてきて、
いつの間にかグラスにビールが注がれ、
なんだかんだまったく会話にならない会話を続けていると、
1本のビンが空き、2本のビンが空き、そして4本のビールが空いた。
おっさん飲み過ぎじゃ!と言っても、
そのおっさんは止まることなくビールを飲み続ける。
おごられたものを断るわけにもいかず、
おっさんに付き合って僕もビールを飲み続ける。
チリのビールは1リットル入りのビンに入っている。
つまりは既に一人2リットルは飲んでいると言うことだ。
そんなことにはかまわず、4本目のビールが空になる前に、
5本目のビールを頼んだのであった。
おっさんなぜか上機嫌。
そしてなぜかケーキがふるまわれる。
そんでもって「はっぴば~すでぃとぅーゆー♪」の音楽が。
スペイン語の歌詞だったのでまったくわからなかったが、
なんとおっさんの誕生日だったのだ。
どーりでおっさん機嫌が良いはずだ。
僕も負けずにハッピバースディを歌い、
日本語で「おめでとう」と言い、
なぜかお礼にダンスを踊った。
5本目のビンが空き、6本目のビンが空くと、
すっかり夜になってしまったのでそろそろ行くか、とおっさんと店を後にした。
ちなみにそのおっさんがやっぱりゲイで、
帰り道にキスを迫られ必死の思いで逃げ帰ったことは、
僕にとってはいまさらなんら特別な出来事ではないが、
忘れないようにここにメモをしておくことにする。
乙女な町では誰もが乙女になりたがる、ということだ。なんて。
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