2009年3月29日日曜日

世界一周(40)チリ/山を越えて行こうよ











DATE:2009/03/29 Chile - Santiago -


なんてもったいないことをしていたのだろう。

目の前をゆっくりと流れていく景色を見ながら、
夜行バスでここを訪れたことを思い出してそう思った。

白い雪を抱いた山々、そして竜の鱗のようなうねり狂う山肌。
ブドウ畑を後にして僕が見たアンデスの山々は単に美しいを通り越して凄みさえもあった。

雪山からごつごつとした岩山までなんでもありの美しい道を
10人乗りのミニバンはジェットコースターのように走り抜けていく。
どうやら最も早い運転手を選んでしまったようで他の車を寄せ付けず、
1時間ほど前に出発したはずの別のバスをぐんぐんと追い抜いた。

山々の間に流れる川はいつの間にか大きくなりいつの間にか小さくなる。
最も大きな川が流れていた場所では山が削り取られ、
一直線のがけ崩れのように不自然な垂直が続いている。
その川もまた時の流れに姿を消したのか、今では小さな流れだけが大河の後を流れている。


こんなきれいなところをタダで見れるなんてお得じゃん。

もと来た道を戻るなんて無駄なことはやりたくなかったが、
この景色を見ているとそんなことは忘れてしまった。
やはり南米は自然が美しくダイナミックな場所らしい。

これから氷河を見に行くかを迷っていたがこの景色を見ていて吹っ切れた。
予定になかったパタゴニアを追加することで予定の多くを削らなくてはならないが、
それもまた仕方ない。南米を旅するということはこの大地の自然に触れるということ。
そう悟った以上、それをしなければ意味はない。

それにこれまでの南米の旅の中でわかったことは、
僕が大好きな町歩きがそれほど面白くないという事で、
逆に言うとそれを捨てて自然を満喫することは悪くない選択に思えた。


スピード違反のミニバンはあっという間に山々を潜り抜け、
僕のパスポートに二つ目のチリのスタンプを刻んだ後、たった5時間でサンティアゴへとたどり着いた。
ほぼ同じ距離のバルパライソからメンドーサまでは8時間もかかったのだから、
どう考えてもそれは交通違反ぎりぎりアウトの仕業としか思えなかった。


たどり着いたらたどり着いたで、今日はひとつ仕事がある。
今日、サンティアゴに戻ってくるはずのマサミを迎えるべく部屋探しをしなくてはならない。
物価が高いサンティアゴにおいてそれは結構大変なことでもある。
いくつかのホテルを回り値段交渉をしてみたが、条件に合うところが見つからず、
エリアを変えて探してみようかと思ったころ、僕の携帯が着信を知らせた。


「ごめん、てっちゃん。今日行けない」

なんだか泣きそうな声でマサミが受話器の中でそう言っている。
いきなりの事でまったく状況を理解できていない。
そう言えばエジプトのカイロではこんな感じで乗り遅れてたっけか、とふと思い出した。

ともかく状況確認をしようと聞いてみると、
どうやら乗り過ごしとかではないことがわかる。
なんとLAN航空のミスで搭乗の予約がされていなかったらしく、それで今日は出発できないそうだ。

「まじ?」と思わず言ってみるも僕も彼女の状況はわかっている。
なんと彼女はイースター島に2週間以上も閉じ込められている。
元々は帰りの飛行機の予約が取れなかったらしいがようやく取れた今日のフライトも駄目になってしまった。
なので責めることもできず、とりあえずわかったと言い電話を切った。


なんじゃそりゃ。

なんだか一気にテンションが下がってしまった。
会いたい人に会えない時はそんなもんだ。

ともかく適当な宿を探そうとしたがそれも面倒になり、
以前泊まっていたユースホテルへと足を伸ばし、顔見知りの受付のチリ人に一泊するよと伝えた。


うーんどうしたもんか。

私、待つわ。なんて言ってられるほど日程の余裕はないが、
ここまで来てしまった以上、やっぱりちょっとは会いたいし。


まぁ、ともかく明日。と考える事を放棄してベッドに横になり、そのままぐっすりと眠った。

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