2009年3月23日月曜日

世界一周(40)チリ/バルパライソの憂鬱











DATE:2009/03/23 Chile - Valparaiso -


今日はサンティアゴを離れて、
近くの世界遺産の町バルパライソへ移動することにした。

サンティアゴから車で約2時間の場所。
日帰り旅行でも良かったが、
なんとなく気分を変えてみたくなったのだ。


バックパックに荷物を詰め込んで、
バルパライソ行きのバスへと乗り込んだ。

サンティアゴの町は相変わらずスモッグに覆われている。

またこの場所へ来るのは1ヶ月後ぐらいだろうか。
このままチリを南下しパタゴニアの世界へ。
そしてアルゼンチンのブエノスアイレスからまたサンティアゴへ戻ってくる。

ウユニ塩湖に無理やり行ってしまったため、
なんだかグチャグチャなルートになってしまったが仕方がない。
南米をぐるぐると無鉄砲に回るのも悪くはない。


バルパライソへ着くと町は曇り空。
サンティアゴから比べると長袖のシャツが必要なほど肌寒い。

バスターミナル近くの宿に身を落ち着かせると、
しばしゆっくりして晴れ間がさしてきた町へと繰り出した。


この町は世界遺産に登録されていると言うが、
それほど特別な町には思えなかった。

確かに小高い山に囲まれた盆地で、
その山肌にびっしりと家が立ち並んでいる様は特別ではあるが、
それだけの町ならば今までいくつも見てきた。
ヨルダンのアンマンやスペインのグラナダ。
そのどちらも世界遺産ではないが、
この町との違いは大差ない。

それよりもこの町もまたスモッグで多いつくされていて、
世界遺産の町並みなのに灰色の絵の具をかぶったように見える。
それが何よりも残念なことだった。


なんだかよくわからない町の探索だがそれなりには面白い。

久しぶりの太平洋を間近で見ながら
遠くに見えるタンカーや軍用艦を眺める。

潮の匂いがした。
大して久しぶりはないはずなのに、
なぜだか懐かしさを感じてしまう。

前に嗅いだのはいつの頃だっただろう。
ブラジルの海岸のはずだから1ヶ月も前の話だ。

南米に来て1ヶ月が経っていた。
なんだかあっという間だった気がする。
移動に費やす時間が多いからか、
それほどの町を歩いたという気はしないが、
それでも1ヶ月経ってしまったという事実があった。


町を歩いているとたくさんの路上アートが目に付いた。
そのレベルが非常に高くまるで美術館にでも来ているようだ。
いつの間にか夢中になりその辺りの路地をくまなく回っているうちに、
お気に入りのアーティストまで出来てしまったほどだ。

そう言えばグラナダもこんな町だった。
大好きな町を思い出し、
何の変哲もないと感じていたこの町が少し好きになった。


日が暮れ始めていたがせっかくなので、
坂を登り山の中腹まで行ってみることにした。

見た目通りの急な山の腹には、
張り巡らされるように坂や階段が張り付いている。
まるで植物の根のような人の営みがそこにあった。

その内の一つの階段を登ると、
一軒のミュージアムへとたどり着き、
その場所からの眺めに一息ついてのんびりと考え事をした。

高台から眺める景色はさすがに世界遺産で、
教会の時計台やうねるように走る道路が真下に広がり、
さらにその奥には港に並ぶ船が、
そして最後には太平洋が広がっている。
登ってから気づいたが高台にはロープウェイが張られていて、
そこかしこで50メートルにも満たない短いロープウェイが動いていた。

しかしながらやはり町はスモッグに覆われていて、
その灰色の絵の具はなぜか心をどんよりさせた。


なんだか最近、旅をすることに面白さを感じていない。

以前ならば新しい町に着けば、
そんなことは一気に吹っ飛んでいったのに、
なぜかここ最近はただ惰性で旅をしているような気分になる。

決められたルートをなぞるだけの旅。
なんだかそういう感覚に捕らわれた。


旅に飽きてきたのかもな。そんな事を考える。

自分の性格からいって、
1年も続ければたいていの事は飽きてしまうのだ。
旅だってその例外ではない。

このまま惰性で旅を続ける意味はあるのか。
そんな疑問が頭の中によぎった。

もちろんまだ行きたい場所はある。
アマゾンにパタゴニアの氷河。
ニューヨークにジャマイカ。

ただ、そんな夢の場所へ行くことさえも億劫になっている。

なぜかどうしようもない倦怠感が僕を襲っていた。



山を降りて宿に戻り、
気分を変えようと今日は自炊をすることにした。

久しぶりのキッチン。腕が鳴る。

とは言ってもそう長居をするつもりはないので、
南米らしく大きなステーキ肉と、
味付け用にキッコーマンの醤油を買い込んで、
ご飯を炊いて赤ワインと共にステーキを胃袋の中に押し込んだ。


明日になれば。

何かが変わるかもしれない。

何はともあれ旅はまだ続くのだ。
こんなところで萎れている場合ではない。


明日になれば。明日になれば。


そう思いチリワインを飲み干した。


旅に疲れた旅人は何をすれば良いのだろう。
旅を辞めれば良いのだろうか。
そしたら旅人は何者になるというのだろう。


終わることのない無限ループが僕の頭の中に渦巻いていた。

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