DATE:2009/03/17 Bolivia - Uyuni -
白い海に朝日が満ちた。
世界は徐々に色を取り戻し、まずは全てが赤く染まり、
ゆっくりと大地は白へと色を変えていった。
真っ赤に染まった空がゆっくりと青を取り戻し、
それと呼応するように大地が白く染まっていく姿はとても不思議な魔法のようだった。
当然のごとく1時間ほど遅れた運転手は朝ごはんを当に食べ終えた僕らを乗せて、
新たなる大地へと向かって走り出した。
今日の予定はフラミンゴの生息する湖を訪れること。
そしてその湖は赤、青、緑と色とりどりの表情を見せるという。
真っ白な大地に満足した僕らだったが、今日の湖もまた楽しみの一つであった。
走り出して30分。
そんな期待に答えるかのごとく、車はゆっくりと動きを止めた。
もちろんそれは故障であり既に最低のツアーとあきらめ顔の僕らは
怒ることもなく乾いた大地に作られた農地の中でのんびりとそれを眺めた。
30分もすると修理も終わり、車は大地を走り始めた。
昨日までの白い大地と違い今日は砂漠のような乾いた道を走っている。
こんな乾いた土地でも植物は育つらしくいくつかの農作物の姿が見える。
放牧されているのだろうリャマの姿も時たま見えて、車の中の観客を大いに沸かせた。
1時間ほど走り近くの町で食料や水の補給をした後、やっと車は湖へと向けて走り始めた。
途中、いくつかのグループが今朝の僕らと同じように車の故障だろうか車を囲みながら腕組をしている。
それでも携帯が通じる安心感からか、何人かはヒッチハイクの要領で右手を上げて僕らの笑いを誘った。
白い大地は消えたものの塩分濃度が高いのは同じらしく、
大地には所々塩が吹き出た場所が見える。
そんな所でも人は生きていけるらしくいくつか村があることには驚いた。
へんてこなかまぼこのような建物が建つ軍のチェックポイントを過ぎて僕らはただひたすら走った。
少しずつ周りの景色は変わり始めていた。
いつの間にか草が大地に生え始めぽつりぽつりではあるが地面を緑に染めている。
いくつもの山が辺りにはそびえ立ち、聞いてみるとそのほとんどが五千メートルクラス、
大きいものとなると六千メートルを超えるものさえあった。
既にいま車で走っている場所が四千メートルを超えているのだ、それは当然のことに思えた。
それだけ高い山になるとやはり雲との距離が圧倒的に近く、
ほとんど触れ合うぐらいの高さの雲の陰が山に落ちた姿はとても美しい。
風が強いからか高速で動く雲の陰は山々を黒く色付かせた。
これだけ乾いた大地となるとへんてこな地形も多いらしく、
僕らは穴ぼこだらけの岩が並ぶ奇妙な世界へと一時停止ししばらくそこで楽しんだ。
どうやらこの辺りは火山でできた土地らしい。
運転手が指差した方向にはゆっくりと煙を上げる活火山の姿があった。
それは小さく恐れるほどのものではないが、それでも大地の生命を感じるには十分だった。
途中ジープでも険しい道があり、
僕らは車から降りて自力で小さな山を登った。
ジープはあとからグィングィンと音を立ててゆっくりと山を登ってきた。
そこを越えるとようやくフラミンゴの生息する湖へとたどり着いた。
最初に目に飛び込んだのはフラミンゴの姿ではなく、
空を映す美しい湖の姿だった。
風のない湖にはぽっかりと浮かんだ雲と青空が写りこんでいて、
それだけでも絶景に値する姿だ。
そんな静かな湖の中、フラミンゴは空を歩くように世話しなく餌を啄ばんでいる。
ゆっくりと空の上を歩く姿はとても幻想的で、その長い足もまた魅力的に思えた。
多くのフラミンゴは白いままだったが、いくつかは赤く色づき美しい色彩を放っている。
何かで知った知識だがフラミンゴの元々の色は白で、
ある特定の餌を食べることで赤く色づくそうだ。
となると既に赤く色づいた個体はくいしんぼうな奴らということだろう。
そう思うと優雅に見えるフラミンゴの歩調もなんだかおかしく見えた。
そんな美しい湖を見ながらの朝食。
手ごろな座る場所がなかったのでそのまま砂利の上で食べていると、
「日本人は床に座って食べる」という話になる。
そういえばメンバーにとっては珍しい姿なのかもしれない。
日本もそしてアジアの多くの国が床に座って食べるという話をし、
僕らの部屋はとてもきれいだからね、と付け足した。
その後2つほどフラミンゴのいる湖へと訪れたが、
正直なところ最後のほうはみな飽きていたというのが本当のところだ。
どんなに貴重な生物でもハトみたいにどこにでもいればお腹いっぱいにもなるわけだ。
湖まわりと奇岩めぐりを終えた僕らは、
冷え始めた空気の中、今日の宿へと向かった。
さすがに四千メートルの夜だ。ダウンジャケットを着ていてもかなり冷える。
そう言えば富士山の山頂もこんな感じだったなと久々に日本のことを思い出した。
夕食の時間になるとツアー最後の夜ということもあり、
各自持ち寄ったワインやなんだらで乾杯を交わした。
そのうちになんだか盛り上がり、隣のメキシコ人のクリスチャングループの提案で
ゲームをすることになり、椅子取りゲームのようなそれは大いに盛り上がった。
盛り上がった僕らの体を冷やすように外には雨が降っていた。
遠くに光る雷が花火のようにも見えた。
今日は夜空は見えそうにない。
それでも僕らは心地よい仲間に出会えた幸せからか笑いあうことができた。
美しい景色に出会えただけではない満足感が僕らを満たしていた。
誰からともなく部屋へと戻っていき、ぐっすりとベッドの中で眠った。
寒いはずの部屋だったがそれをまったく感じないのが不思議だった。
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