DATE:2009/03/13 Bolivia - Villa Montes -
パラグアイの国境を越えてからも
延々とジャングルの中をバスは走っていく。
噂に名高いボリビアの悪路の歓迎もなく
しっかりと舗装された道を夜行バスは延々と走り続けた。
深夜2時にパラグアイを出国したバスは、
すでに3時間近くもボリビアの道を走っている。
しかしここは本当にボリビアなのだろうか。
そんな疑問が眠った脳の中でぐるぐると回る。
なにせパラグアイを出国してから、
まだボリビア側の入国を果たしていないのだ。
最初はいつものように緩衝地帯を抜けてから、
ボリビア側の入国管理事務所で入国手続きを済ませるものと思っていたが、
その緩衝地帯らしき道はすでに3時間も走り続けていて、
これはもうボリビアに入国しているとしか思えない。
もしかしたら、ボリビアの入国手続きを忘れてきたのかもしれない。
そんな不安に駆られるが、他の人を見ても、
入国手続きを行ったような様子はみられない。
いったいこの場所はなんという国なのだろう。
そんな疑問を抱えたまま夜行バスはスピードを上げて、
真っ暗闇のジャングルの中を走っていった。
いつの間にか眠ってしまった僕の目を覚まさせたのは、
いきなりのでこぼこ道で先ほどまでの快適な道はどこへ行ったのか、
ジャングルの獣道を走るように、
バスはいつの間にかぬかるみの中を進んでいた。
窓の外はうっすらと明るくなり始めていて、
外のジャングルがぼんやりと見えはじめる。
「BOLIVIA」
飛び込んできたのはそう書かれた看板だった。
でこぼこ道を走り出してすぐの事だ。
どうやらここがボリビアの始まり、という事らしかった。
では今まで何時間も走り続けてきた道は、
どこの国の土地だったのだろう。
世の中には国境線などが意味を成さない、
不思議な場所もあることを知った。
ボリビアに入って以来、未舗装のでこぼこ道が続いている。
国境を越えれば国が変わったのがすぐわかる。
何度も経験してきたことなのだが、これほど顕著なのは初めてだ。
噂に名高いボリビアの悪路の歓迎を受け、
朝もやの中のでこぼこ道をひたすらにバスは走っていった。
朝7時。ようやく太陽も昇ったころ、
でこぼこ道を走り続けたバスはボリビアの入国管理事務所へとたどり着いた。
いったいこの5時間の間、
僕はどの国に滞在していたのかは不明だが
どうにかまた次の国ボリビアへの入国を果たしたようだった。
無事、入国を果たした僕はさらに1時間ほどバスに乗り、
ボリビア名物のストライキ、なのか変な住民のおばちゃんを蹴散らすと
僕は荷物と共にヴィラ・モンテスの町で降ろされた。
クリスチャンなのだろうか、
真っ黒なローブとつなぎの服を着た人達と一緒に降りたが、
旅人らしき人は僕意外は誰もいなかった。
さて、どうするか。
笑えるほど何もない道の上で、僕はひとつ深呼吸をした。
アスンシオンのバスターミナルで聞いた情報が正しいかどうかは知らないが、
ともかくこの町からの脱出は一筋縄ではいかないようだ。
せめてバスターミナルで降ろされると思っていたが、
ここはどこだかわからない道の上で次へのバスさえも見つかりはしない。
ともかくこういう時は進むしかない。
旅の教訓とはシンプルなもので、
「わからなければ誰かに聞け」なのだ。
言葉など通じなくても行き先さえわかればどうにかなるものだ。
ただもうひとつの教訓、
「一人の人に聞いたことを信じるな」も忘れてはならない。
少し歩くとバス会社のオフィスのようなものがあり、
そこで「ウユニに行きたいんだ」と言うと、
地図を示しながらこうやって乗り継いで行けば着けるよ、と
遠回りなのか近道なのかわからないルートを教えてくれた。
「バスターミナルはある」と聞くとあっちだ、と教えてくれて、
「町の中心地はどこ?」と聞くとあっちだ、と教えてくれた。
グラシアス。とお礼を言い、
バスターミナルに向かった。
またそこでも「ウユニに行きたいんだ」と言うと
「タリハ」という町まで行けば
ウユニまでの経由地「ポトシ」へ行くバスがあると聞き、
結局そのルートでウユニへと向かうことにした。
アスンシオン→ヴィラ・モンテス→タリハ→ポトシ→ウユニ。
ボリビアきっての観光地に行くのに、
なんでここまで乗り継がなくてはならないのかが不明だが、
ともかくウユニまでのルートは確保できたようだ。
計算上では明日中にウユニまでにたどり着けることになり、
サンタ・クルズを通る正規ルートより1日は短縮できたことになる。
ウユニ塩湖に水があるかどうかはわからないが、
ともかくアスンシオンのおっさんの言うとおりだったと言うことだ。
旅は信じることに限る。
バスの出発時間は6時だったので、
この町でしばらく暇をつぶすことにした。
ボリビアのお金がなかったため、
重い荷物を担ぎながら両替屋を探してどうにか米ドルを両替して、
旅の資金を確保した。
しかしまぁ、歩いてみればわかるが何もない町だ。
町の中央を走る道には商店街が並び、
そこそこ栄えているように見えるが、
その道を一本曲がれば未整備の茂みが多い茂るジャングルへと飛び出してしまう。
それでもこの町の雰囲気は平和そのもので、
田舎町ののんびりとした時間の中に身を浸すのは心地がよい。
たまに通る日本語の会社名が書かれた車に驚き、
TOYOSAと書かれたわけのわからないメーカーの車に驚く。
一軒のカフェのオープンテラスに陣取り飲み物を頼むと、
その公園の見えるテーブルの上で日記などを書いて時間を潰した。
道行く人を見ていても平和そのもので何の変哲もない町だが、
ただひとつ面白い点としては
先ほどバスを一緒に降りたクリスチャンらしき人達が暮らしているということだ。
男性はオーバーオールのつなぎ。
女性は黒いローブ。
その明らかに周りの住民とは異なる特徴を持つ人達は、
白人なのだろうか顔や肌の色も違うように思える。
こんなボリビアの田舎町で暮らす彼らの歴史はどんなものなのだろうか。
それに興味を持ったが、観光案内所もないこの町では知ることができない。
ただこの人々はなぜか他の人々を寄せ付けない雰囲気を持っていて、
特に笑顔もなくしかめ面をしていることが多く、
何もこんな平和な田舎町でそんな不幸そうな顔をしなくても良いのに、
なんてことを思ってしまったのは確かだ。
僕が知らない歴史の中に彼らは暮らし、
そして今もその歴史を紡いでいる。
誰も知らないこの町でそんなことが起きていることがなんだか不思議に思えた。
何もないようなこの町でも時間はきちんと過ぎているようで、
いつの間にか出発の時間になりバスに乗り込んで次の町、タリハを目指した。
バスに向かう道の途中で口を腫らした人がいた。
「どうしたの?」と聞くと「コカだ」と言った。
コカ。と言えばコカ茶。もちろん原料はコカインと同じコカの葉だ。
なんにもない田舎だと思っていたがすっかりボリビアに入っていたらしい。
マテ茶からコカ茶へ。
国が変われば文化が変わる。
さぁ、新しい国ボリビア編始まり!
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