DATE:2009/03/05 Brazil - Foz do Iguazu -
爆音を響かせる滝の前にいると地球が今なお動き続けていることを思う。
イグアスの巨大な滝の前で思うのはただそのことだけだった。
地球は生きている。僕らはその中に居る。
イグアスの滝は国境を挟んでブラジル側とアルゼンチン側に分かれており、
今日訪れたのはブラジル側の滝だ。
ブラジル側は滝の全景を眺めることができ、
アルゼンチン側は「悪魔ののど笛」と呼ばれる最大の滝を間近に見ることができる。
イグアスの滝と言ってもそれは一つではなく、大小300以上の滝が4000メートルに渡って広がっている。
その広大な滝の全景をまずはブラジル側から今日は眺める。
フォス・ド・イグアスの町からバスに乗り1時間弱、バスは国立公園の前へとたどり着く。
国立公園の入り口にはアナグマの看板が掲げられていて、
公園内に多く出没するアライグマぐらいの大きさの小動物はマスコットにもなっているようだ。
ちょいと高めの入場料を払うとまずはまたバスに乗り園内を移動する。
これまた30分近くもかかる大移動だ。それだけ園内が広いということだ。
アルゼンチン側はバスではなく電車で移動するとの事で、
どちらにしてもイグアスの滝がある国立公園は広大な敷地だということがわかる。
蝶がひらひらと舞う公園内を走りぬけ、バスは30分ほどで第一の停留所で停車する。
このままバスに乗って「悪魔ののど笛」の近くまで移動することもできるが、
ここはやはり別の大小の滝を眺めながら歩いて行くのが楽しい。
多くの乗客はここで下車する。僕らもそれに習いバスから降りた。
聞こえる。
まだ何も見えていないうちから滝の音が響いていた。
僕らは音のする方へ緑の中に整備された遊歩道を早足で歩く。
緑が開け見えてきたのは大小いくつもの滝が音を立てて落下する姿だった。
その音とは裏腹に意外にも繊細な姿であることに驚く。
テレビで見たイグアスの滝の姿は巨大なスペクタクルそのものだったが、
目の前にある滝は糸のように落下する幾つもの滝が鍋から零れ落ちた水のように落下する姿だった。
迫力ばかりかと思っていたイグアスの滝の姿に少し驚く。
もちろんこの後に控える「悪魔ののど笛」の姿は異なるのだろうが、
目の前にある名も無き滝の姿は美しくこれもまたイグアスの滝の姿なのだと知った。
公園内にはきれいに整備された遊歩道が滝に沿うように張り巡らされている。
僕らはそれに沿って幾つもの滝を眺めながら自然の中をのんびりと歩くことができる。
公園内には幾つもの蝶が舞っていて、
時たまオレンジやブルーの美しい蝶が遊歩道の手すりに留まっている。
その美しい姿を見ながらの公園散策はとても心地が良い。
滝の流れる大迫力のBGMを聞きながら自然を満喫しながら歩いた。
相方マサミが今まで見つめていた滝を無視して一直線に走り出した。
何事かと思っていると「アナグマ!」との声が聞こえた。
僕もあわてて姿を追うと1匹のアナグマが餌をねだってやってきた所だった。
こいつがアナグマか!とキュートな姿に喜んでいると、
森の中からあれよあれよと何匹ものアナグマが溢れるように現れる。
どうやらガイドが餌を持っておびき寄せているようだ。
最初一匹だったアナグマもあっという間に10匹を超える大所帯になり、道はアナグマだらけ。
いったいどこに居たのかと思うほどの数で長い尻尾をピンと立ててガイドが持つ餌を物欲しげに見つめている。
「餌をあげないでください」の看板はどーした、と思うものも、
まーブラジル人だからいいのかも知れない。ガイドとしては大失格だと思うけれど。
餌をもらったアナグマは満足したらしく道端で毛づくろいをしたり、
寝転んだりと観光客へのサービス満点で道端にたむろしている。
観光客の中にはヒッピーのようなブラジル兄さんもいたりして、
その彼らも意外にもアナグマに興奮してなでなでしてたりするのが面白い。
アナグマはその隙に彼らのバッグの中をあさっていたりするのだが。
そんな自然溢れる公園を歩いていると「キャー」というジェットコースターのような歓声が聞こえる。
何事?と思い声の聞こえる滝の方を見ると
ボートが滝に突っ込んでる・・・。
どうやらあれがイグアス名物びしょぬれボートトリップらしい。
10人乗りぐらいの小さなボートが滝の下に特攻する姿は無謀としかいえないのだが、
やっぱり見ていると楽しそうで、アルゼンチン側に行った時にはぜひやろうと決意する。
ただし多くの観光客がここでカメラを駄目にするという伝説も持つこのアトラクション。
まぁ、あの水量に突っ込む姿を見ればわからなくもない。
滝の音が大きくなっている。それで最大の滝が近づいてきているのがわかった。
世界で最も大きな滝の一つはその音で僕らの気分を盛り上げる。
遠くに水しぶきが見える。
もくもくと雲のように上っていく水しぶきはその奥に隠れる滝の大きさを物語っている。
全景の見えないその滝の水しぶきのベールは近づくに連れてゆっくりと開けていった。
目の前に現れた「悪魔ののど笛」は今までの美しいイグアスの滝とは打って変わって、
その名にふさわしい獰猛な色と音の塊だった。
100メートル以上あろうかという幅の滝の天辺からは茶色く濁った水が溢れ、
それが地上へ落ちていくにしたがって真っ白な水塊へと姿を変えさらに霧へと変わる。
音を立てて延々と繰り返されるその光景に僕はただ吸い込まれるように見入った。
滝の近くの展望台は水しぶきですでにびしょ濡れで、
風が吹くたびに雨と言っていい程の水しぶきが僕らへと吹きつけあっという間に観光客もびしょ濡れになる。
おかげでレンズに水滴が付きまともな写真も取れないが、これが自然のそのままの姿なのだ。
僕はカメラを向けるのを諦めてただその繰り返される落下を見つめた。
ここで落下した水は水しぶきになり雲になり、
それがまた世界をめぐりまたここで繰り返される落下へと繋がっていく。
そんな地球規模の動きを間近で感じることができる。
僕にはただ「すげー」としか表現することができない、そんな地球の鼓動。
繰り返される当たり前の出来事が轟々と音を立てて命を主張する。
そうだこの星は生きている。
その細胞の一つでしかない僕らは共に彼と生きなくてはならないのだ。
エコとかロハスとかそういうのじゃない。
ただ彼と共に生きる。それだけで良いはずなのだ。
僕らはただ彼に生かされているちっぽけな命でしかないのだから。
僕らは地球と共に。
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