DATE:2009/03/03 Brazil - Sao Paulo -
朝、見知らぬ場所で目を覚まし、
「あぁここは○Xなのだ」と思うのは毎度のことだが、
目が覚めたとき、そこが他人の家だと思い出したのは初めてのことだ。
目を覚ましていたマリさんやアキラにおはよう、と言い、
今日の一日が始まった。
久しぶりに見ると、
なんだか「生活」というものが不思議に思えた。
1年前はあれほど当たり前で毎日繰り返していた出来事が、
この場所では同じように毎日当たり前に繰り返されている。
ブラジル人らしく少し送れて出社するアキラに、
これまたブラジルらしく、いってらっしゃいのキスをマリさんがして、
二人の生活がまた始まっていた。
その当たり前の光景が、
とてもほほえましく、なんだかうらやましくも思えた。
僕ら旅人には同じ日というのが一つとしてない。
それは楽しいものではあるが、
慣れてくると退屈なものでもあるのかもしれない。
残された3人。
マサミと僕とマリさんで取り留めのない会話を長々と話し、
日も昇ってきたことだしと、プールに入ることになった。
プール付きマンション。
なんて言うと大層リッチなマンションに聞こえるが、
マリさんの言うことには、まぁ中級。なのだそうだ。
それは謙遜してのこと、と思うが、
それでも日本ではマンションにプールがあるなど、
よほどのお金持ちでない限りはお目にすることはないだろう。
そんな環境の違いというか、
豊かさの考え方の違いが面白く思えた。
少し肌寒いプールに飛び込みひと泳ぎし、
後はプールサイドのチェアーに寝そべり、
また延々と取り留めのない話をした。
世界一周の話、ブラジルの話。
話し好き3人。終わることのない会話。
ゲラゲラと笑っていたら、
どうやら居住者しか使えないプールらしく、
管理人さんから注意されあえなく部屋へと退散となった。
マリさんはそのことに大層ご立腹だったが、
どうやらブラジルのマンションにも、
お目付け役というかうるさいオバサン的な人がいるらしく、
そんな話を聞けたのも意外で面白かった。
プールから上がりおなかも空いたので、
ご飯を食べに近所のおしゃれなパン屋さんに行く。
住宅街の中はとても雰囲気が良く、
サンパウロの街中で見かけた浮浪者などを目にすることはない。
ひとつの町にもいろいろな場所があるのだな。
そんな当たり前のことを実感した。
きっと単に旅行をしていただけでは、
この場所を訪れることがなかっただろう。
僕はこの偶然に感謝をした。
パンを平らげ部屋に戻り、
また延々と話をする。
取り留めのない会話。
それはとても心地よい時間だった。
イグアス行きのバスの時間が来たので、
家の近くでタクシーを拾いマリさんの家を後にした。
タクシーの中で僕らはマリさんが見えなくなるまで手を振った。
こんなことも久しぶりだと思った。
別れる人がいる。見送る人がいる。
どちらもまた会えることを信じて。
値段が安い夜のバスを待ち、
バス停でまたマサミと僕は取りとめのない会話をする。
当たり前だったこの景色も、
一人減った今は少し物足りなさを感じた。
偶然が生んだサンパウロの贈り物。
あの日、あの時、あの場所で。
そんな陳腐な言葉だが、出会いとはそんなものかもしれない。
世の中にはインドで出会う恋もあれば、100円ショップで出会う恋もあるのだ。
さようならサンパウロ。
さようならマリさん。
明日はまた別の町。
明日はまた別の出会い。 そして別れ。
マリさん、本当にありがとうございました。
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