DATE:2009/02/21 Brazil - Rio de Janeiro -
・・・何時だ?いま。
薄くなり始めた光はどうやら夕方の風景のようだった。
寝すぎじゃん。俺。
昨日、カーニバル初日でテンションがあがり過ぎたのか、
結局1時ごろまで踊り続けてしまい、さらにその後にビールを飲んだくれたため、
今日動き出したのはもう夕方になってからだった。
昼ごろに何かを食べに出かけた記憶はあるが、
そのまま直ぐに帰宅しまたビールを飲みながら寝てしまったようだ。
まだ飲みかけのビールの缶がベッドの横のテーブルにぬるま湯のような温度で置かれたていた。
まぁね。祭りだしね。と言い訳じみた言葉を頭の中で繰り返す。
祭りというのはなんとも便利な免罪符のような言葉のようだ。
目が覚めたときから既に街は祭りの続きを始めているようで、
ドン、ドンと腹に響く重低音がさほど遠くない距離から聞こえて来ている。
僕らもそれに遅れてはならぬ、とシャワーを浴び着替えをしてから街へと繰り出した。
昨日同様にゴミが散乱する道を音鳴る方へ歩いていく。
面白いのがゴミの中でも空き缶だけがなくなっている事で、
見渡してみると祭りの中ゴミ拾いに駆け回る人たちがいる。
この人々は普段から空き缶やペットボトルを回収する仕事をしている人で、
どうやら彼らにとってもカーニバルはかき入れ時のようであった。
路上で暮らす彼らのような人々でもカーニバルでは踊る人もいるし、
こうやって仕事をこなす人々もいる。
それでも面白いのが空き缶を拾う人々が音楽に合わせリズムを取っていることで、
たまに仕事そっちのけで空き缶のごっそり入った袋を持ちながらステップを踏んでいたりする。
どんな仕事でもカーニバルの熱には勝てないのかもしれない。
音鳴る方へ。音鳴る方へ。
いつの間にか昨日行ったライブ会場へとたどり着いてしまったが、
今日はさらに奥の方からも音が聞こえてくる。
寝起きでほとんど何も食べていなかったこともあり、
食料探索がてらそちらの方へ向かっていくと。。。
路上パレード!!
向こうの方からずらりと並んだ大群がこちらの方へ押し寄せてくるのが見える。
その後方からは音楽が鳴り響き、4車線ある車道は全て彼らで埋め尽くされていた。
パレードと言うよりはなんだかデモ行進のようだが、
それでも参加者は思い思いに楽しみながら歩いている。
僕らは露天で買ったおいしい肉の串焼きを片手にそれを見送る。
観光客達はパレードの列に後ろから付いていく者もあれば、
思い思いにぶらぶらと道を歩いている人もいる。
その姿は昨日よりもさらにグレードアップしていて、ほとんど仮装大賞。
ネコキャラもいれば、仮面舞踏会のような人もいるし、
中にはダンボールで作ったテレビカメラを担いでレポーター気取りの奴もいる。
パレードの参加者も見物人もみながみなそれぞれに祭りを楽しんでいるのだ。
ライブ会場で踊ってくるというマサミと別行動をとり、
僕はそのままパレードの行列を奥に奥に進んでいく。
どうやら町内対抗のようなこの路上パレードはいくつものチームが次々とやってくるようだ。
パレードの切れ目には見物人がうろうろと歩き、
さらにその奥の方からは別のパレードのグループがゆっくりと向かってくる。
しかしこのパレード。
本当に無料の路上パレードなのかといった気合の入り様。
各チームそれぞれにオレンジや青、白や金といった色とりどりの衣装を身にまとい、
まるで写真で見たリオのパレードのように本物顔負けの装いなのである。
さらに衣装以外にも本物同様に大きな山車が路上をパレードし、
10人以上の踊り子がその舞台の上で観客に踊りを振りまいている。
100人ほどの同じ衣装を着た踊り子達の真ん中には、
羽飾りや大きな旗を持った特別な衣装に身を包んだクイーンやキングが踊り歩く。
サンバクイーンの衣装はもちろん露出度が高いセクシーな衣装で、
さらにさすがにサンバクイーンと言うだけあって綺麗な女性が
高いヒールを履きながらサンバを踊っている。
周りを飾る踊り子の衣装もまたセクシーなもので、
それがなんと小学生ぐらいの子供でさえも着こなしているのだから凄い。
これを小さいころからやっていれば、そりゃ街中を露出度全開で歩く訳だ。
衣装はそれぞれ独自のセルフオーダーのようで、
セクシーを通り越してたまに乳首が見えちゃってる人もいるが、
それは・・・やっぱサービスとしてありがたく受け取っておこう。
踊り子達の人種はさすがブラジル、本当にさまざまだ。
黒人の文化とキリスト教の儀式が結びついて始まったというカーニバルは、
全てのカラーを巻き込んでいまここで1つになっている。
街の人、全員参加といった勢いのパレードは何百メートルも続き、
さらにその奥には待機中のグループが何組もいるのだから路上パレードといっても相当のものだ。
まっすぐな道を練り歩く人たちの笑顔は忘れることの出来ない南米の最初の記念碑となった。
僕はいま興奮の中にいる。
それは僕だけではなくここにいる全ての人が共有する1つの心だった。
踊るアホウに見るアホウ。
そんなこと言わなくてもわかっている。ここに来ればそれがわかるさ。
ほら勝手に体が動くだろ。
果てしなく続くように見えるパレードが世界の全てだった。僕はその中にいた。
そんな夜にもまた、別の物語が続いている。
「ねぇ、テッチャン。わたし、強盗に会った。拳銃見た」
おぃ。おぃ。
合流したマサミが告げたひと言は、ふざけているようだったが本当のようだった。
幸い運良く一緒に居たというブラジル人が助けてくれたようで、
被害は特になかったようだ。
ブラジル。リオの街はカーニバルでも甘くはねーぜって事だ。
浮かれる街の夜の闇ではまた別の世界があるみたいだ。
僕は「ばか」と言い、そっとマサミの頭をなでた。
光が強ければ強いほど、闇もまたその濃さを増す。
僕はいま、リオ・デ・ジャネイロの街にいる。
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