DATE:2009/02/11 Spain - Granada -
「マサミ!」
寝ぼけまなこにノーメイク。
どうやら急いで準備してきたらしく宿で再会したマサミは、マサミらしく休日モード。
イスタンブールで別れた彼女に僕はいまスペインのグラナダの町で追いついた。
しばし再会を喜んだが世界遺産であるアルハンブラ宮殿のチケットを予約してしまっていたので、
宿で別れて後でまた会う約束をしていそいそと宮殿へと向かった。
アルハンブラ宮殿は最も美しいイスラム建築の一つとして数えられている。
なぜこんなスペインの地にイスラム建築が?と思うも、
それもまたヨーロッパの複雑な歴史って奴らしかった。
その昔、強大な勢力を誇ったイスラム王朝の勢力の端っこがここグラナダであったという訳だ。
正直言うと、ナスル宮殿に入るまではこの宮殿がそれ程のものとは思っていなかった。
もちろん花が咲き乱れる庭園はきれいなものではあったが、
さすがに冬ということもあり花の量もそう多くなく整備された公園程度にしか思えなかった。
それよりも宮殿の高台から眺めたグラナダの白い町並みが美しく、
どちらかというとそちらの方に興味を惹かれたぐらいだ。
起伏のある丘の上に築かれたグラナダの町は表情がとても独特で興味をそそられる。
が、ナスル宮殿に入ってしまえばその印象はがらりと変わる。
アルハンブラ宮殿の中央に建てられたこの建物だけが入場時間の制限がある理由がすぐにわかる。
今まで見たどんなイスラム建築の装飾もこのアルハンブラ宮殿のものには適わないだろう。
もちろん荘厳さではイスタンブールのブルーモスクには劣るが、
こと装飾といった面ではこれほどまでに美しく精緻なものを見たことがない。
まるで珊瑚のような美しさを放つ天井やレリーフ。
それが一部だけではなく建物全体がそうなのだから驚く。
圧倒的過ぎるその美しさに魅了されつい待ち合わせの時間を忘れた。
つい長居をして約束の時間を過ぎてしまう。
宿で待っていたマサミに謝り今度は丘の上へと歩いてみることにした。
グラナダはヒッピーとジプシーの町だ。
この町が纏う空気は独特で、自由とほんの少しのマリファナの匂いがする。
路上にはアクセサリーを売るヒッピーが溢れ、世の時間の流れとは少しずれた時が流れている。
真っ白な壁には時折、グラフィカルアートが書き込まれている。
普段なら単なる落書きにしか見えないそれだが、
この町の絵は芸術作品と言って良いほどに優れていて青空の下の美術館にも思えてくる。
ある意味では治安の悪さを表しているといってもよいが、
それらのアートを見ながら歩くことも、この町の1つの楽しみと言ってよかった。
丘の上に続く道を歩いていくと町が見下ろせるバルコニーに出た。
その広場には何人もの人が集まっていて、それぞれ自由に時を過ごしている。
ギターを弾く者、アクセサリーを売る者、ただぼんやりと空を見つめる者。
その誰もがこの場所の空気を吸い、それに染まっているように思えた。
この町はいい。そう確信できたのもこの広場に着いてからだ。
ここでは誰もが自由を望み、そしてそれが許されているようだった。
ジグザグとした町を迷いながら歩き丘の上へと登る。
丘には何人かの住人が好き勝手に洞窟のような家をこしらえて生活を営んでいる。
丘の上に築かれた崩れかけた城壁に登り町を見渡す。吹く風が心地よい。
丘で暮らす人々の笑い声が聞こえた。
丘の上に立ち夕日が沈むまで見送った後、丘を後にした。
白い屋根が光を失っていく姿はなぜかモノクロの映画のように見え、
世界が別の何かに染まってしまったような気がした。
この町をきっと気に入るだろう。そんな予感がした。
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