2009年1月24日土曜日

世界一周(33)ギリシャ/ひとりの夜






DATE:2009/01/24 Greece - Thessaloniki -


僕は早朝の電車の中にいた。

これからまた一人旅が始まる。

そう思うと寂しくもあるがまたワクワクもしている。

誰かと旅をする良さも一人で旅をする良さも。
まだ僕は旅の途中にいるのだと思った。



動き出した列車はガタゴトと音を立て、
あっという間に大都会を後にした。

イスタンブールの町を抜けるとトルコの大地は
広大な農業地帯が広がっている。

そういえばトルコについて、
移動の景色を見るのは初めてだった。
夜行に乗ってばかりいたので、
今日に至るまで景色を見ることなんてなかったのだ。

あっという間に過ぎ去った1週間。
僕が見ることがなかった世界がこの場所にはまだまだ埋まっている。
それを思うとトルコを離れるのが少し名残惜しくなった。


太陽もすっかり昇り、
車窓から眺める景色の光も強くなったころ、
ふと残してきたマサミの事を思い出した。

今頃起きだしたころかしら。

寝ぼけながら歯でも磨いている様子を想像して、
なんだかおかしくなった。

今日からまたそれぞれの旅が始まっていた。


お昼を過ぎてもギリシャ行きの列車は相変わらずガタゴトと揺れている。

ここからギリシャのテッサロニキまで列車で向かい、
そこから列車かバスを乗り継いで岩の上の教会があるメテオラを目指す。

上手くいけば明日の朝には、
遅くとも明日中にはメテオラへと到着する予定だ。

ギリシャからはフェリーでイタリアへと向かい、
イタリアからは飛行機でスペインを目指す予定だ。
そしてさらにそこから南米へ。

中東の旅が終わり、
ヨーロッパの旅もまた始まる前からカウントダウンをはじめている。

南米から先は・・・想像もつかない。



ギリシャの国境には3時ごろたどり着いた。

トルコ語からギリシャ語へ。

国境の駅に掲げられた駅名の看板には、
見慣れないファイの文字が描かれていた。


出国の手続きはあっという間に済んだが、
ギリシャ側の列車の乗り継ぎがあるらしく1時間近くその駅で過ごすことになった。


ついにトルコを出てヨーロッパへとたどり着いたのだ。

何もない駅で列車の通らない線路を眺めながら、
トルコへと続くレールを眺めてそう思った。

通り過ぎてきた道だった。
そして反対を見ればこれからいくレールが繋がっている。


トルコ。

この旅の中でひとつのメインイベントであった国が終わりを告げた。

最も憧れたのは白い台地パムッカレだった。

その絶景をテレビでひと目見たときから、
そこは一生で一度は訪れたい憧憬の場所となっていた。

その憧れは期待に外れることなく、
青空の下、真っ白な姿を僕に見せてくれた。


パムッカレにギョレメ。

それらの自然だけではなく歴史に満ちた町もある。

イスタンブールの町はどこまで歩いても飽きることはなかったし、
そこに建つ建造物の全てが1度では見回ることができないくらい、
強く感動を与えるものばかりだった


そしてなぜかこの国には働く人々に刺激を受けた。
絨毯屋のサディックさんや、ハマムのケセジさん。
冷やかしに訪れた皮用品のお土産屋さんや民族衣装のお店。

そこで働く誰もが、
今までどこの国でも感じた事のない「プロ」を感じさせる人たちだった。

なぜこの国の人たちが僕にそう感じさせたのかはわからない。

それは中東とヨーロッパの文化が交じり合った結果かもしれないし、
トルコ人という人々のもともとの気質かもしれない。

しかしそこには立ち並ぶ高層ビルがハリボテに感じさせない力があった。
こういう感覚に陥ったのは中国以来久しぶりだった。


この旅を始める前は単に観光地としての憧れだった国が、
国境を越えた今、成長の魅力あふれる10年後が楽しみな国へと変わっている。


この国にもう一度来よう。

できれば夏の日がいい。

きらきらと輝く太陽の中、たくさんの自然をもう一度訪れ、
そしてイスタンブールの町の変化を楽しむのだ。

整備された路地。ずらりと並んだショッピングセンター。
そして天高く伸びる高層ビル。

すでに発展を謳歌しているこの街はどう変わっていくのだろう。

中東もヨーロッパもアジアも。

すべてひっくるめてさらにユニークな街になっているに違いない。
だって何千年もの間、この場所は世界の玄関口だったのだから。




夕日が沈みかけたころにやってきた列車に乗り込んで、
僕はギリシャの町へと向かった。

スペイン人2人、韓国人一人の3人組と出会い、
お互いの旅を語り合う。

出会い、別れ。そうだこれが旅ってやつだ。



深夜1時ごろ真夜中にテッサロニキの街に着き、
乗り継ぎの列車を探したが、
結局それは明日の夕方にしかないことがわかり、
明日の早朝のバスを探すことにした。


さて今日の夜をどう過ごそうか。


駅の中のベンチに座りぼーっとしていると、
駅が閉まる時間らしく警備の人に虫けらのように追い出された。
なんだかギリシャ人いやな感じだ。

しかたなく外に出てどうするか思案するが、
バスターミナル行きの始発バスは6時。
ホテルに泊まるとしても、どうせ3時間ほどしか滞在はしない。


じゃ、ここで寝るか。


そう思い駅の入り口の隅っこに寝袋を敷き、
バックパックを枕にして寝袋に包まった。


This is Backpacker's.


そう思うとなんだか一人旅の感を取り戻した気になる。

久しぶりの一人の夜。
記念すべき第一日目の宿泊先は駅の外側の隅っこになった。

街には霧のような雨が降っていた。
それでも気分は参らず、なぜか僕の心はちょっとワクワクしたままだった。

ひんやりとしたアスファルトの上に敷いた寝袋は以外にも暖かく、
いつの間にかぐっすりと眠りに落ちていった。

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