DATE:2009/01/22 Turkey - Istanbul -
「ひろしごめん」と書いた手紙。
僕らは彼を知るというトルコ人に、
「ひろしに今日のランチは行けなくなった」と伝言を頼み、
トプカプ宮殿を目指した。
この際だから「ひろし」の説明は省くことにする。
今日はトプカプ宮殿がメインディッシュなのだから。
オスマン帝国の王たちの宮殿、トプカプ宮殿。
トルコ最後となる今日はそこへ訪れることにした。
1日1つの名所をめぐる贅沢な観光プランはやはりバックパッカーならではだ。
ブルーモスクにアヤソフィア、そしてトプカプ宮殿。
どれ一つとっても1時間や2時間の観光では物足りない。
急いで駆け足で回るツアーなんて想像もできない。
それほどイスタンブールの建築物は魅力に満ちている。
イスタンブールに数多くある歴史的建造物の中で、
このトプカプ宮殿は最も大きなものである。
そりゃ、歴代の王たちの宮殿なのだから当然なのだが、
大都会イスタンブールの土地をこんなにも占めていいのだろうかと心配するぐらい広い。
宮殿は中央のきらびやかな建物から始まり、
それを取り囲むように広い庭が広がりそれを城壁が囲んでいる。
それで終わりと思いきやその周りに「第一の庭」があり、
広い大きな庭をさらに帝王の門をようする城壁が囲んでいる。
敷地面積70平方km。東京ドーム換算でいうと1.5倍ほどの大きさだ。
そんなわけでこの広大な宮殿を回るために、
ひろしとの約束は反故となったのだがそれは思い出話の一つだ。
トプカプ宮殿もまたとにかく美しい。
荘厳さや神聖さといった面では、
ブルーモスクやアヤソフィアが勝っているが、
きらびやかさという面では圧倒的にトプカプ宮殿が勝利を収める。
真っ白な大理石を基調にした建造物の数々。
そのどれもがイスラムのアラベスク模様で埋め尽くされている。
それは観光客用のトイレにまで及ぶほどだ。
僕は世界一贅沢なトイレに入った気がしている。
宮殿に残された金銀財宝もまた素晴らしく、
驚くほど巨大なダイヤモンドや宝石をちりばめた剣や王冠に目をくらませた。
そして驚くべきは天井で、
見たこともないほどの精緻な文様がびっしりと天に浮かんでいる。
白い大理石に浮かぶ金や赤、そして青い色たち。
なんだかアラビアンナイトの王様を思い出させるような宮殿だ。
そしてここにはハーレムがあった。
「ハーレム」と聞いてぴくりともしない男子は、
きっと最近うわさの草食男子とかなんとか言う奴だろう。
美女たちが住まう楽園。王は毎夜その美女の中から一人を選び・・・ごくり。
つまりはそーいう場所がハーレムであって、
最盛期には1000人の美女が暮らしていたという。なんとうらやましい。
僕が王様だったらあの子とあの子と、あの子も・・・。
とまぁイメージは膨らむが、
実際のところハーレムは意外と実質的な生活空間になっている。
女性たちが暮らす部屋、そして教育のための部屋。
そんな実生活に必要な部屋ももちろんあり、
それらの部屋を抜けていくと浴室やトイレなんかもあったりする。
王様が女性を選びに行くために通った通路や、
寵愛した女性が住まう家などもあったりして当時の様子が伺える。
王が暮らした部屋や女王たちの部屋はやはり豪華で、
ハーレム外にある実務用の部屋なんてかすんで見えるほどだ。
そんなわけで結局4時間近くも宮殿の中を歩き回り、
腹ペコになりながらやっとのことで外に出たのであった。
いやぁ、さすがイスラムの王の暮らした宮殿。
何はともかくハーレムはやはりうらやましい。
おなかが空いたので近くの観光客向けのケバブ屋でケバブサンドを頼むと・・・。
肉少なっ!!!
普段ならば行かない観光客向けの所で買ったのが悪かったのか、
町の2倍近くの値段のくせに2分の1の肉の量。
おなかが空いていたイライラも手伝ってか、
マサミと二人でムスッとする。
マサミはさらにキレる。食べ物の恨みは恐ろしい。
という訳で気を取り直して、
町に出て屋台のケバブ屋で気が済むまでケバブを食べる。
鶏肉のケバブに牛肉のケバブ。
トルコのケバブはやはり本場というか、
中東で食べてきたものよりも圧倒的にうまい。
しっかりと味がついており、
その中東チックな味付けがなんとも言えず美味なのだ。
すっかり満足した二人は「最後だしね。」
イスタンブールのバーへと向かった。
1ヶ月以上、中東を旅したマサミとも今日でお別れだ。
僕はここから電車でギリシャへ向かい、
マサミはここから飛行機でスペインへ向かう。
なんだかんだいってこの素敵な女の子は旅の友としては最高だった。
そのピースフルな考え方、人への異常なまでのフレンドリーさ。
どこへ行ってもその土地の人に愛される彼女を僕はとても尊敬している。
たまにぶっ飛んでいるけれどその話しっぷりも、
職業柄というかさすがというしかない。
明日からまた一人旅が始まる。
その実感はまだない。
でもきっと、始まってしまえばすぐにそれに慣れるだろう。
旅とはそういうものなのだ。
出会い、別れる。
その繰り返しこそが旅を続けるものの定め。
ビールを二つ。ウェイターに頼む。
なみなみと注がれたグラスを受け取り僕らはグラスを掲げた。
「乾杯!」
そうしてイスタンブールの夜は更けていった。
きっと僕はこの女の子を好きになり始めている。
僕は彼女の笑い声を聞きながら、
アルコールのまわった不確かな脳の中、なんとなくそう思った。
さようなら。また会う日まで。
僕は今日もまた旅人だった。
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