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DATE:2009/01/12 Lebanon - Beirut -
うめ~~~~~~~~~~~~!!!!
思わず二人の口からこの言葉が飛び出した。
レバノン料理3軒目、「LE CHEF」。
この店が最高に当たりだった。
チキンスープに魚のクリームソース With カシューナッツ。
目の前に出されたそのフランス料理のような料理に、
思わず期待が高まる。
そして一口。
見た目の期待を裏切らず、
これが最高に美味なのだ。
さすがレバノン。来て良かったレバノン!
思わずそう感謝してしまうほどの味。
特にこのクリームソースの味付けが絶妙で、
中東らしい香辛料とフレンチのソースのようなクリームに見事にマッチ。
チキンスープもしっかりと出汁が聞いていて文句もでない。
しかもこの店。安いのだ。
庶民の店、といった店構え。
昨日行った高級レバノン料理の店の半額以下の値段なのだが、
それでも味は断然上。
伝統的なレバノン料理の店といった感じではなく、
庶民の味を上手く各国料理と組み合わせた感がある。
その味に満足し、
ロゼワインを楽しみ、最後はデザートまで食べてしまう。
バックパッカーとしてはだいぶ散財しているが、
それはどーでも良い事だ。
なにせここには美味いものを求めてきたのだから。
ご飯にもすっかり満足しお互いにご機嫌に町歩きを始める。
近くのショッピングセンターは新しく作れたもののようで、
カルティエはじめ海外の高級ショップがごまんと並ぶ。
イタリア、フランス、ロンドン、ニューヨーク。
どこかで聞いたことのあるショップが、
ずらりと並んでいる姿は中東らしからぬ姿だ。
いったいこのレバノンに何が起こっているのか。
内戦後、10年もたっていないこの場所に、
なぜこんなにも高級店が並ぶのか。
昨日調べてみると、
どうやら中東のオイルマネーが内戦後の、
この場所に多く流れ込んでいるらしかった。
再建という名の買占めなのかもしれない。
どう見ても不釣合いなそのビルの数々は、
それでもレバノンを傷跡から隠すように聳え立っていた。
高級ショップの数々。
やはり女の子、気になるらしく、
マサミはきらきらと目を輝かせている。
「ねぇ、これ幾ら?」スカーフを見てそう聞かれた僕は、
「1万円ぐらいかなぁ、たぶん」と答えると、
「なんだ安いじゃん、ちょっと入ってみよう」と
マサミに連れられて一軒のイタリアブランドのブティックに入ってみることにした。
明らかに雰囲気から外れている僕たちだが、
1万円ぐらいなら買うお金もある。
伝家の宝刀ゴールドカードだってあるのだ。と、
場違いなところをドキドキしながらドアを開ける。
いらっしゃいませ。
と、スタッフの一人が挨拶する。さすが高級店。教育は良いらしい。
さっそく品定めをするマサミ。
僕はそれを後ろから面白そうに眺める。
ワンピースを持って値段を聞かれたので、
「2万5千円ぐらい」と答えると、
これがその値段かぁ。と真剣に悩み始めた。
確かに持っている服はデザインも良く、
それでその値段ならばお買い得とも言える。
迷っている僕らを見てスタッフはにこにこ顔だ。
明らかに場違いな僕らでも帰ればお客さんということか。
ドルだと幾らなんだろう?とマサミが聞いたので、
聞いてみればとスタッフに声をかけた。
「2000ドルになります」
そう答えたスタッフに、へぇ2000ドルねぇ。
と他人事のように思っていたが、
少しして大きな間違いに気づいた。
2000ドル!!!
つまりは20万円!
どーやら大馬鹿なことに1桁間違えていたようだ。
そりゃそうだ、高級ブティックでワンピースが2万円なんてことはないのだ。
「2000ドルだって」
「ね。2000ドル。。。桁間違ってたね」
お互い笑顔で暗黙の了解を得る。
そのまま買う振りをして店をふらふらとして、
「サンキュー」と言ってお店を出た。
そしてもちろん足早にその店を離れたことは言うまでもない。
「ま、買えるけどね」と僕。
「私なんて、もっと安く良いもの作れるもんね」とマサミ。
「旅だから持ち運べないしね」と僕。
「私だっていくつかあのぐらいの値段の服持ってるしね」とマサミ。
レバノンの空は青く透き通っていた。
遠い国の冬の日の出来事だった。
気を取り直して町をふらふらしてカメラを構えると、
「ノーフォト!」の声がかかった。
何の変哲もないただの風景。
なぜだと聞くと要領を得ない。
良くわからないままその道を進み、
またカメラを構えると、
「ノーフォト!」と別の警備員から声がかけられた。
なぜだ。と聞くと、
ひとつの家を指差して何かを言っている。
大統領の家でもあるのだろうか、と思っていると、
それはまさしく大統領の家で、
それでセキュリティがわんさかと道を見張っているのであった。
その内の一人が英語を話せたので、
レバノンの事を聞いてみた。
経済のこと、内戦のこと、などなどなど。
彼によればレバノンの経済は上り調子で、
内戦の影響も今ではほとんどない、との事だった。
ありがとう。と言って彼に別れを告げ、
その事について二人で話した。
レバノンの経済が順調。
個人的には?と言わざるを得ない。
確かに多くのビルが建てられ、
近代的な町並みに変わってきている。
見た目だけ言えば経済成長著しいと言えるだろう。
しかしその沢山の高層ビル。
そのビルの中に人が入っていることを見たことがない。
立ち並ぶマンションも同じだ。
それは単にその経済がバブルだったという事を示している。
多くのオイルマネーがレバノンに流れ込んだ。
それはきっと事実だろう。
しかしそれを利用できるだけの経済がレバノンにはなかった。
だからビルだけが立ち並び、
上辺だけの成長をしてしまっているようにも見える。
昨日見た市場の人々。
そして20万の洋服を買う人々。
その人々が同一人物であるはずがない。
背景には大きな格差が広がっていることを気づかされる。
内戦後の町が安全かということもまた疑問だ。
町を歩けば多くの警官がそこかしこに立っている。
それをしなければならない町が安全だとは思えない。
もちろんレバノンが殺伐としたイメージかというと、
それはそうでもない。
夜出歩くのもそれほどの危なさを感じることはない。
それでもまだ警官がいるというのは、
別の何か、例えばテロや何かが起こる可能性を考えざるを得ない。
なにせこれほどの貧富の格差がある国だ。
それが起きる可能性は0ではないのだ。
結局のところこの町はまだ器が整ったに過ぎない。
高層ビルやマンションなど、
利用する人がいなければ単に自己満足でしかないのだ。
それが機能し始めるのはいつのことだろう。
特に目立った特徴があるとは言えないレバノン。
中東で唯一、農業が盛んな土地というぐらいだろう。
それは大きな利点だが、
世界中でものが取引される現在、
目だって発展ができるほどの存在ではないかもしれない。
深夜0時。
夜の街に繰り出す。
平日の夜は土日の騒がしさとまでは行かないが、
店はそれなりに賑わいを見せている。
そのうちの一軒のバーを選び、
音楽に揺られながら赤ワインを飲み込む。
別のテーブルではお洒落な若者たちが、
グラスを片手にお喋りに興じている。
何はともあれ。
料理が美味くて、夜が楽しい。
それだけあれば十分なのかもしれない。
レバノンの経済がどうだろうが、
このクールな夜は毎日続いていくだろう。
10年後、この町がどうなっているのかはわからないが、
それでもこうやって遊びまわる大人は消えることはないだろう。
隣の席のモデルのようなレバノンっ子が、
音楽に乗って踊りだした。
僕らはそれを見ながらクールと言って乾杯をした。
モデルのようなスラリとした足の女性。
ゲイのようなマッチョマン。
レズの目を持つウェイトレス。
ヒッピーのようなドレッドマン。
髪を短く切ったアジアンガール。
何もかもひっくるめてレバノンの夜は回る。
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