DATE:2009/01/11 Lebanon - Beirut -
昨日の王様気分がまだ抜けていないのか、
ぐーたらにも起きだしたのはお昼を回ってからだった。
しかし「食い倒れる」というこの企画には丁度いいだろう。
再起動した頭と共にお腹もまたぐーぐーと音を立てて鳴っていた。
せっかくのレバノン料理。
どうせなら有名店へ行こうとガイドブックの情報を元へ、
ハムサ地区にある「Socrate」という店に向かった。
歩いてもいけない距離ではないが、
お腹がすいた僕らは乗り合いバスを探すことにした。
ここでタクシーを使わないのがバックパッカー。
タクシーとの料金トラブルにこりごりということもある。
ハムサ地区への道の途中で待っていればバスが来るだろうと思い、
5分ほどすると案の定、バスらしき看板を付けた白いバンがやってきた。
中東の旅で困るのがこのバスの行き先という奴で、
数字は付いているものの全てアラビア数字表記だし、
行き先ももちろんのことだ。
というわけで毎回口頭で運転手に確認しなくてはならない。
「ハムサ?」と僕が運転手に問いかけると。
「そうだ!」と勢いよく運転手が返してきた。
そんなわけで僕ら二人はそのバスに乗り込んだ。
そしてたどり着いた場所は「シェムサ」だった。
・・・どこやねん。
「ハムサ?」と運転手に聞くと「そうだ。シェムサだ。」と答える。
「ハムサ」ともう一度聞くと、「ハムサ?違うここはシェムサだ」と笑って答えた。
「違う!ハムサに行きたいんだ」と言うと、
指で向こうの方向を指して別のバスへ乗れと指示し、
その運転手は笑いながらどこかへ白バンを走らせて行ってしまった。
明らかに道を外れていることは気づいていたが、
循環バスか何かと思って気にもしていなかったのがまずかった。
バスは30分ほど走っていたのでどうやら中心からは相当離れた、
「シェムサ」という得体の知れない場所に来てしまったらしい。
まぁ、来てしまったのなら仕方がない。
せっかくなので。
といってその辺を観光をしてみることにした。
どうやらこの辺りは市場になっているらしく、
多くの人で賑わっている。
きっとこの辺りは市民の台所と言ったところだろう、
昨日僕らが見た近代都市とはまったく別の顔をしている。
雨上がりのぬかるんだ道。無造作に捨てられたごみ達。
威勢のいい声があちこちから飛んでいる。
そこには野菜を売り、香水を売り、電子機器を売りと、
ありとあらゆる物が商売のネタになっている。
お腹のすいていた僕らは、
良くわからないシロップ漬けのお菓子を買い、
その価格にも驚いた。
なんと1つ10円ほど。
中東の価格としてはなんら驚くべきことではないが、
昨日僕らが食べた料理は一人1000円は超える。
もちろんそれはある程度良いレストランでの食事だったからだが、
それにしてもこれほど格差があるなんて。
僕らが昨日見た世界はレバノンの日常なのだろうか。
それとも特別な世界なのだろうか。
この雑然とした市場を歩きながらそんな事を考えた。
お腹も限界を超えてきたので市場歩きを止めて、
目的地の「ハムサ」へと向かうことにした。
探していると運良く乗り合いタクシーなるものが止まったので、
それに乗ってハムサへ向かった。
この乗り合いタクシーはれっきとした市民の足で、
同じルートをぐるぐるしている間に、
たくさんの人が乗っては降りる。
僕らがハムサに向かう間も、
オシャレなスーツに身を包んだ女性が乗り込み、
そして僕らが知らない別の場所で降りていった。
ハムサ地区に来ると、
また僕らが知っているビルが立ち並ぶ近代的な地区へと変わった。
それでも昨日夜見たときには気づかなかったことに、ひとつ気づく。
近代的、と思っていたその高いビル。
そのいくつかは何か大きな穴が開いたまま、
廃墟のように立ち尽くしているだけだった。
これが内戦の傷跡か。
近代化に塗りつぶされ今はほぼ感じることがないが
やはりこの場所で内戦が起きていたのは事実らしい。
時たま見る崩れかけの建物が墓石のようにそれを物語っていた。
ハムサ地区は旅行者が多く滞在し、
また外国人の住居も多いとのことで、
なかなかにオシャレなお店が多い。
僕らは目移りしながら目的の「Socrate」へとたどり着いた。
さすがは高級レバノン料理店らしく、
店に着くと英語が通じ英語のメニューが渡された。
しかし高級。と言ってもそこは中東のこと。
「これが食べたい」と言うとことごとく「今日はない」という返事で、
良くわからない肉の何かを頼んだ。
店内の内装もさっぱりとしていて、
来ている客もなにやらお金持ちそうな人ばかりだ。
これは期待できるぞ、とビール片手に待っていると
ついに念願の料理が僕の前に置かれた。
ドルマかよっ!!!
つい突っ込む。
僕の悲しげな顔にマサミは大笑いだ。
「ドルマだねぇ」「ドルマだな」と落胆の会話を交わす。
ドルマとは何ぞや。
この中東で度々遭遇する危険な食べ物は、
肉とライスをピーマンや葉っぱなど、
何かいろんなものに詰めた親指ほどの大きさの食べ物なのだが、
これがどこに行ってもおいしい物に出会ったことがない。
しかも普段ならばドルマは何かのつけ合わせにしか出てこないのだが、
僕が頼んだのはドルマ自体だったらしく、
目の前にはドルマがどっさりと盛り付けられてる。
ドルマ攻撃・・・。
食い倒れるはずのレバノンでまさかこいつを腹いっぱい詰め込むことになるとは。
葡萄の葉で包んだドルマ。
羊の腸で包んだドルマ。
ズッキーニで包んだドルマ。
ドルマ。ドルマ。ドルマ。
しかしここはレバノンだ。
もしかしたらドルマが美味しいなんていう奇跡があるのかもしれない。
そう思い葡萄の葉のドルマをひとつ口の中に放り込んだ。
「うまい!・・・ドルマにしては・・・」
無理やり考え出したコメントはそれで、
確かに今まで食べたドルマと比べれば格段に美味いのだが、
ドルマはドルマでしかなく、やっぱりそれは大量に食べられるほどのものではなかった。
そんなわけで食い倒レバノン、第一回目のお相手はドルマになり、
なんだか釈然としない気分でそのドルマを限界まで食べ続け、
3分の1を残したところでギブアップとなったのであった。
ちなみに相方マサミの料理は
味の付いたライスにナッツと羊肉を煮込んだものをかけたもの。
付け合せのヨーグルトと合わせて食べるらしいが、
こちらの方は初めて食べた味だったが結構いけるものだった。
今後のレバノン料理への希望が持てたということか。
お口直しに近くのコーヒーショップで、
コーヒーとケーキを食べる。
こんなことも久しくしてなかったねぇ。
なんて二人で感慨に浸る。
コーヒーは砂糖もミルクも入っていない薫り高いブラック。
そして、三層に重ねられたムースの上に輝く真っ黒なチョコレートソース。
見た目も美しいが味もまた、
中東のお菓子のように甘すぎることがなく、
久々にケーキらしいケーキを食べた。
その文化の味に浸りながら、
二人でまったりと久々のカフェを堪能した。
ドルマには閉口したが、
久々のリッチな食事とカフェに満足し、
ハムサ地区から歩いてホテルと向かった。
途中、なにやらイベントみたいなものがあり近づいてみると、
ガザ地区での戦争に反対する運動をやっていた。
やはり中東諸国にとってガザでの戦争は他人事ではない出来事なのだろう。
学生なのだろうか若者が拡声器を使って、
道行く人にその惨状を訴えかけていた。
言葉はわからなかったがきっとそうだと思う。
僕らは彼らの募金箱に小額だがお金を入れて、平和を願った。
道を歩けば高級ブティックがあり、
アクセサリーや高そうなドレスがショーウィンドーに飾られている。
この店ではどんな人が買うのだろうか。
今日訪れた市場を思い出して、
そこにある大きな隔たりを思った。
明るくイルミネーションに彩られた
ショッピングセンターのような地区を抜けて、
ライトアップされたモスクを通り過ぎて宿に戻ると、
疲れていたのか眠ってしまい、
今日一日が幕を閉じた。
そういえばこの日食べたのは一食のみ。
食い倒レバノン。明日の健闘を祈る。
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