DATE:2009/01/02 Jordan - Amman -
今日はイスラエルへ行こう。
というつもりだったが朝起きたら、
なんだかそれも面倒になり正月休みと決め付けて、
一日ゆっくりと過ごすことにした。
1年中休みのようなものだから、
正月休みも土日もないのだろうけれども、
せめてそれぐらいは新年気分をね、というグータラ根性だ。
イスラエルの情勢は良くなっているわけではないが、
何人かのイスラエル帰国組みに聞いたところ、
エルサレムなどのガザから遠い地域は特に問題なく観光ができるようだ。
危険がないわけではないが、
なかなかこれる場所でもないのでイスラエルに行くことを決めた。
イスラエルの出入国にはいろいろとめんどくさいところがあり、
イスラエルのスタンプがあると入国を許してくれない、
シリアやレバノンなどのアラブ諸国に対応するため、
必ず入国管理官の前で「別紙にスタンプを押してください」と言う必要がある。
そうすればパスポートにはその痕跡が残らず、
無事にほかのアラブ諸国も回れるという寸法だが、
もちろんイスラエル側がいい顔をするわけもなく、
ネチネチと父親の名前や職業など、
どうでもいいことを嫌がらせのように聞かれるという噂だ。
長い人になると1時間以上も質問がされるということだから、
けっこう真剣にめんどくさい。
こんなことやってるから世界各国の人に嫌われるのだ、
とイスラエルのことを非難したくもなるが、
彼らの言いたいこともわかるので、
それはお邪魔する立場として受け入れるしかない。
そうそう。
イスラエルという国は、世界各国で良い評判を聞かない。
それは兵役が終わってから旅をする多くのイスラエル人の傲慢な態度だったり、
イスラエル自体のパレスチナ人に対する態度だったりするのだろうが、
自分自身は旅で出会ったイスラエル人に嫌な思いをしたことはなく、
まぁ確かに強そうな人たちだけれど悪いやつ等だとは思っていない。
そんなわけでイスラエルとはどんなものぞな。
という興味はかなりあるわけで、
戦争中という非常事態にも関わらず行ってみる事にしたのであった。
正月休み。と銘打ってみたものの、
正月番組がやってるでもなく、正月セールが始まってるわけでもないので、
何にもないアンマンの町ではやることもない。
ただ中東の料理にも飽きてきていたので中華でも食べようと、
町歩きをかねてうろうろとしてみることにした。
しかし驚くほどアンマンには何もない。
普通ならば首都といえば何か観光地らしきものがあったりするが、
アンマンは本当に何にもないのだから驚く。
町を歩いていてもこれと言って特別なところはなく、
中東に初めて訪れたならともかく、
エジプトから半月もたってしまった今、
驚くべきものはそう多くはなかった。
食べ物もまたレパートリーが少なく、
ファラフェルと呼ばれるコロッケ入りのサンドイッチか、
羊や鶏肉のケバブ、あとは甘そうな砂糖漬けのお菓子たち。そんなものしかない。
外食をあまりしない文化だというから、
きっと家庭ではまた違ったレパートリーがあるのだろう。
それが見えないのが少し残念だ。
アンマンの町は谷のようなところに作られていて、
試しに丘の上に続く階段を上ってみるとなんと500段以上もあり、
たどり着いたときにはへろへろになってしまうのであった。
その丘を下ったり登ったりしていると大きな青空マーケットのようなところに出た。
洋服から野菜、人形や文房具までなんでもありの市場は、
たくさんの人でごった返している。
イスラム式のおしゃれとは見事なもので、
頭にかぶるスカーフをさまざまな形で結び美しさを引き出している。
中にはサングラスをかけたおしゃれな女性もいて、
その黒い衣服とのギャップに少しドキドキもする。
果物屋ではナツメヤシのシロップ漬けらしきものを興味深く見ていたら、
店のおじさんが1つくれて、その意外においしい中東のお菓子を味わった。
おじさんはパレスチナ人で、やはりこの人たちはいい人だ。
散歩しても中華料理の店が見つからなかったので、
あきらめて宿に戻り置いてあるガイドブックを片っ端から読んで、
ようやく見つけた中華料理の店を目指すことにした。
散歩した側とは反対側にある丘の上にある中華料理の店の周りは、
閑静な高級住宅街でおしゃれなバーなんかもあったりする。
念願の中華料理はたどり着いたが閉店前で、
メニューをもらって夜にまた食べに来ることに決めた。
そのまま静かな丘の上を歩いていると、
頭上の上をたくさんのハトが舞っていることに気づいた。
それを写真に撮っていると、
一人のおじさんが声をかけてきてこっちへ来いという。
入り口の鍵を開けてもらい二階に上がると、
そこはたくさんのハト小屋が建つハトおじさんの屋上だった。
言葉が通じなかったので正確にはわからないが、
おそらくはレース用のハトだろう。
気が付けば向こうの丘からもたくさんのハトが飛んでいた。
ハトはきちんと芸を仕込まれていて、
おじさんが声をかけると、なんとおじさんの頭にとまってしまった。
おじさんが同じようにしろ、というのでやってみると、
なんと僕の頭の上にもとまった。
一羽だけ違う羽をした特殊なハトだったが、
その頭の良さとおじさんとの親密さに心が温かくなった。
コーヒーを出してもらったりハトを見たりで、
しばらく長居をしてからおじさんとお別れをした。
ヨルダンは何もない国だと思っていた。
ただこの国の人々の優しさは特別なのかもしれない。
サメールという優しいと有名なホテルの従業員も、
なんとなく単にそれはヨルダン人の優しさなのではないかと思った。
エジプト人のように気さくではない彼らのその本質に僕らは今日まで気づかずにいた。
面白みのない特別ではない人たちだと思っていた。
誤りだった。
それは日本人と同じようにシャイで優しい人々が誤解された姿だった。
ヨルダン人は何も特別じゃないけれど、
その素朴な優しさは僕らの心にそっと入ってくれた。
今日、イスラエルに出発してしまえば気づかなかった本質に、
なにか特別な思いを感じた。
必要なときに必要なものを用意してくれる。
神様なんてものはいるかいないか知らないが、
今日の偶然は僕らにとって宝物になった。
夜中、最高に美味な酸辣湯と、最低に不味いピラフのような炒飯を食べて宿に戻った。
いよいよ明日はイスラエル。
聖地でもあり、そして戦地でもある。
深い歴史の中に今も生きるその場所に僕は訪れようとしている。
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