2008年12月29日月曜日

世界一周(28)ヨルダン/脱エジプト記







DATE:2008/12/29 Jordan - WadiMusa -


別れの朝。

ウルルンのようなセリフが良く似合う朝。

残されるものと去るもの。
どちらが楽かはわからないが、
去るものは準備であたふたと過ごすため、
何かと気が紛れるものだと思う。

僕とマサミ、そしてエイタくんはやっとのことで荷造りを済ませ、
宿のロビーでみなと最後の時間を楽しんでいた。

次の国はヨルダン。

ここからヌエバアへとバスで行き、
そこからヨルダンのアカバ行きのフェリーへと乗り換える。
できれば今日中にペトラ遺跡のあるワディームーサまでたどり着きたいところだ。

しかしこのアカバ行きのフェリーが旅人には有名な遅延路線で、
料金が異常に高いわりには(なんと1万円弱)、
3~5時間の遅延は当たり前というトンデモフェリーで、
しかも場合によっては1時間前に出発、
なんていうありえない事態も発生するらしい。

というわけで僕らは最悪の事態を避けるため、
フェリー出港時刻14時の2時間前、12時頃にはヌエバアへ。という予定だ。

しかし・・・。


「あれ、タクシー来ないね」


気づいた時には10時をまわっている。
長距離バス停まではここから15分。
チケットを買うことを考えれば10分前には着きたいところだ。


あれ。やばくね?


一同、焦る。

タクシーをお願いした宿の人にもう一度確認する。
宿の人、なにやら別のスタッフに声をかける。
そのスタッフがついて来い、と合図をした。

僕らはそれに従い急いでリュックを背負い、
重い荷物を背負って宿の外にでる。

そこにはタクシーは。。待ち構えてはいない。

どういうこと?

と思うと、スタッフは歩みを止めず、
さらに裏道をぐんぐん歩いていく。

事態が把握できず、とりあえず追う一同。

スタッフは大通りへ出る。

そして迷うことなく、


すっと手を突き出してタクシーを止めるポーズを取った。




アホかっ!!!!!

いまから止めるんかい!

さっき宿で30分も前に予約をした意味はなんだったのだ。
一同、時計を見ながら焦りに焦る。
既に10時10分をまわっている。
長距離バスステーションに着いてもバスに乗れるかは微妙な範囲だ。


運よくタクシーが通りかかり目の前で車を止める。
タクシーとは言っても軽トラで、
それに荷物を乗せて人も乗せて走るダハブ式タクシーだ。

まぁ、ともかくこれに乗ればバス停までは行けるのだ。
とりあえず乗り込もうとするとスタッフがなにやらタクシーの運ちゃんと話している。

「20ポンドだそうだ」

・・・バカやろう。

さっき10ポンドで予約をした宿との契約はどこへ行った。
流しのタクシー捕まえてボッタクリ価格で乗るのならば、サルでもできるのだ。

だめだ。10ポンドの約束だ。

それを繰り返しタクシーとの交渉を続ける。
時間はないが、ここで負けるのはバックパッカーの名折れだ。
そもそも10ポンドも相場よりは少し積んだ値段なのだ。
タクシーとしても悪くはないはずなのだ。

5分ほど押し問答してようやく10ポンドで話がまとまり、
3人は急いで荷台へと乗り込んだ。

残ったゆうこりん達は僕らに手を振っていて、
なにやら青春の一ページのような感動の別れだ。

去っていくクルマ。

手を振り続ける仲間たち。


あぁ、これでエジプトが終わるのだ。

なんだかそれをしみじみと感じた。

クルマが角を曲がり姿が見えなくなるまで荷台の僕らも、
手すりにつかまりながら大きく手を振って別れた。


感動の別れのシーン。

とは言えだ。これでバスに間に合わなくては意味がないのだ。

次のバスの時間がわからないため、
最悪の場合、このまま宿に戻り感動の再会、もとい
おまぬけ野郎の帰還となるかもしれない。

それだけは避けねば。

あまりにも美しい別れに一同が思いを一つにした。


長距離バスステーションが遠くへ見える。
ただいまの時刻、10時25分。

バスに乗れるかどうかはギリギリのラインだ。

バスステーションにたどり着くなり、
僕とエイタくんが荷台から飛び降りた。

「マサミお金と荷物、エイタくん右からバスを探して!俺は左から行く!!」

荷台での打ち合わせどおり、
脱ダハブ大作戦が開始される。


左の入り口を入ると受付カウンターのようなものが見えた。

今回はこれをとりあえず無視する。
カウンターで悠長にチケットなどを買っていては、
バスが出発してしまうかもしれないのだ。

ともかくバスが並ぶターミナルまで行き、
左側から順にヌエバア行きのバスを探す。

と言っても、バスに書かれたアラビア語の行き先はまったく読めやしない。
手当たり次第にバスの運転手に「ヌエバア!?」
と聞いてみて反応をうかがうしかないのだ。

1件目のバスの運転手に聞くと、
「違う」と言い別のバスを指差す。

「ありがとう」と言ってそのバスの運転手に、
「ヌエバア?」と聞くと、「違う」と言って、
僕の立つ駐車スペースを指差した。

どういう意味?それをジェスチャーで示すと、

「ヌエバア」と言う。

周りを見渡すとそう言えば何人か待っているような様子の人々がいる。

その人たちに「ヌエバア?」と聞いてみると、「そうだ」と答えた。


つまりは。


「まだ来てない」ということだった。




なんじゃい、そりゃ。

行ってしまってないだけ文句は言えないが、
なんだかこんだけ焦ったのに無駄な徒労になっただけだ。

結局、エイタくんも同じ情報を確認したとのことで、
二人で窓口でチケットを買って無事にダハブ脱出を成功させた、


ちなみにバスが到着したのはさらに30分後。

なんじゃい、そりゃ。だ。



ヌエバア行きのバスがそこにたどり着いたのは結局12時ごろだった。

チケットオフィスを探し当て、
やたらと高いフェリー代を払うと、
出港まで1時間の余裕があったので
近くのレストランで焼き魚を食べると、
これが非常においしく、
紅海で魚をあまり食べなかったことを後悔した。


出発の30分ほど前になったので、
フェリー乗り場に行き出国の手続きをする。

出国スタンプが押されて帰ってきたパスポートに、
ついに別れのときが来たことを実感した。

フェリー乗り場にはたくさんの人がいて、
アカバ行きの船を待っている。

係員に「アカバ?」と聞き乗り場を聞いてみると、
少し待て、との返事で僕らはイスに座り出港を待つことになった。


3時間も。



をぃ、こら。少し待てとはこういうことかい。
海割るぞ、モーゼ呼んで来いこのやろ。

噂には聞いていたが、
一向に出港しないフェリーに一同イライラが募る。

遅れるならまだしも、
それが当然のように何のアナウンスもないことが一番のイライラだ。
3時間遅れると言ってくれれば、
何かしら時間のつぶし方を考えるのに、
何も言われないのでその場でじっと出港を待つしかない。
本を読んだり日記を書いたりしていたが、
いつしかそれも飽きてしまい、
ただただ死体のようにぼーっと船を待つ、
旅人の群れがロビーに転がっていた。

ロビーには意外にも日本人の団体客らしい人が多くいる。
ツアーの内容は「エジプト、中東を周る魅惑のアラビアンナイトツアー」
てな感じなのだろうか、
バックパッカーしか使わないだろうと思っていた路線に、
日本人のおじちゃんおばちゃんが一緒に乗り合わせていることが、
なんだか不思議な光景だった。


なにやらアラビア語でアナウンスが流れ、
ようやく出港となる。

待ったのは3時間。航海も3時間。
すっかり暗くなった海の外を見ても何の旅情も感じない。
夕日にきらめく紅海を見ながらエジプトを出国する。
という、ロマンティック出国企画も水の泡だ。

船内にはバーと書いてあるのにお酒がないバーや、
ヨルダンの入国カウンターがある。

入国手続きをこんなフェリーの上でするなんて、
さすが中東というべきか。
世界唯一の動く入国管理だ。

船の上でヨルダンの入国スタンプを押してもらうと、
28ヶ国目のヨルダンの入国が完了した。

まさかエジプトの紅海の中でヨルダンに入国するとは・・・。

中東は摩訶不思議なことが時たま起こる。


あっという間に3時間が過ぎて、
ヨルダンのアカバにたどり着くと時刻は夜8時を回りすっかりと日が暮れている。

どうやらアカバからワディムーサへ向かうバスは、
すでに出発してしまった後で、
向かうならばタクシーを使って移動するしかない。

最後の手段として、
さっきのツアー客のバスにお願いして乗せてもらおうとするも、
さっさと出発してしまったらしくバスの姿すらない。

ワディムーサまではタクシーで1時間ほどの距離。

こりゃ高くつくかも。

そう思ったが3人でシェアすればそれほどコストは高くなく、
許容の範囲内に思えた。
これがみんなで旅をすることのメリットなのだ。

考えてみればアカバで一泊すれば、
その分の宿泊費もかかるのでタクシーで移動したほうがコストは少ない。

しかしタクシーには4人乗れるのだ。

そう考えてしまうのがバックパッカー。
近くで誰かワディムーサへ向かう人がいないかを探していると、
ヨルダン人に囲まれて一人おろおろする日本人を見つけた。

ドランクドラゴンの塚地じゃない方に似てる彼は、
会社の夏休みの1週間で中東を旅しているという、
超高速バックパッカーだ。

彼もやはりペトラ遺跡観光のため、
ワディムーサへ向かうそうなので4人でタクシーをシェアし、
夜の道をびゅんびゅん飛ばしてアカバを後にした。



ようやく目的地のワディムーサに着いたときには、
夜10時過ぎ。

日本の温泉街のような山がちの土地に張り付いたように家が建てられている。
そのびっしりと張り付いた家の明かりが美しく、
また別の土地に来たのだと感慨にふけった。

ヨルダンはエジプトの暖かさとはうって変わって、
ダウンジャケットが必要なほどの寒さだ。
息はいつの間にか白い煙へと変わっている。

宿は暖房器具もなくビールも高い、
いまいちなところだったが毛布に包まり眠りについた。


アフリカ大陸から中東へ。

ここからヨルダン、イスラエル、シリア、レバノン、
そしてトルコへと抜けていく。

イスラエルの情勢はいまだ不明確だが、
その時はその時。風に任せて旅をすればよい。


未知から未知へ。


まだ何も知ることのない中東の旅が今始まる。


世界一周28ヶ国目、ヨルダン入国!!

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