2008年12月30日火曜日

世界一周(28)ヨルダン/ペトラの秘宝







DATE:2008/12/29 Jordan - WadiMusa -


「チャ~ラ、ラッチャ~♪チャララ~♪」

軽トラの上の3人の陽気な日本人は、
ペトラへと向かう送迎バスの中、
張り切ってこの歌を歌っていた。

意外にもここまでノリノリなのは僕らしかいなく、
クレイジー日本人全開で歌を歌う。


そう今日はヨルダン唯一の楽しみペトラ遺跡の観光。

ペトラと言ったら・・・。

インディージョーンズ!!


そんな訳で朝からハイテンションの3人は、
インディージョーンズのテーマ曲を歌い、
意気揚々とペトラ遺跡の入り口へとたどり着いたのである。


たぶん、ほとんどの人が知らない事実だが、
インディージョーンズ/最後の聖戦の後半の遺跡シーンで、
使われたのがこのペトラ遺跡なのである。

こんな事実を知っているのは映画オタクか旅人ぐらいのものだが、
意外にも欧米人の観光客でペトラ遺跡は早朝にも関わらずにぎわっている。


入り口で3000円近くもするチケットを購入し、
いざインディージョンズへの道を歩き出した。

しかしペトラ遺跡は大きなもので、
全長4キロを越える巨大な遺跡群。
目的の遺跡へ着くまでも延々と谷の間を歩き続けなくてはならない。

しかしなんともまぁ、これが良いのだ。

風の浸食で出来た岩の風情が
今迄で見たこともないほどに多彩な表情を見せてくれる。

あるものは渦巻状に、
あるものはウロコの様な絵を刻み、
あるものはただ平行線を描く。

見上げるほどの深い岩の谷の下、
その両岸を見上げればどこへ行ってもそこにしかない景色を発見する。
それが楽しくて目的地の遺跡にも辿りつかぬまま、
30分が過ぎ、1時間が過ぎた。


飽きることがないその曲がりくねった細い谷底を歩いていると、
突然、ペトラの遺跡が姿を現した。
あまりの突然さに「今のなしね」と言って、
もう一度、後戻りしてしまったほど。

谷の細い隙間から覗くように、
見覚えのある遺跡の姿が見える。
細い谷底を抜けるといきなり広い世界になり遺跡が姿を現した。

そこへ至るまでの道のりはひどくドラマチックで、
映画の中にいるような気分にさせてくれる。
そんな映画のセットのような場所にペトラ遺跡はあった。

しばらくそのドラマチックさに見とれていたが、
なんだかそれも可笑しくなってきて、
思わずあの曲を口ずさむ。

「チャ~ラ、ラッチャ~♪チャララ~♪」

もちろんインディージョーンズのテーマ曲。
テンションはまたもトップスピードに乗り、
おかしな日本人たちはさらにペトラ遺跡の奥へと探検を続けた。




それにしてもペトラ遺跡は広い。

谷底を抜けて見た最初の遺跡はまだ入り口で、
さらに奥まで歩くには2時間は優にかかる。

しかもその間の道にもたくさんの遺跡が点在していて、
全部回っていればあっという間に日が暮れてしまう。

まったくやる気のないお土産屋、
それに鼻水を垂らしながら遊びまわる、沢山の現地の子供たち。
からかいながら乾いた大地を歩いていく。



自然の岩に刻まれた沢山の遺跡はどれもが個性的で、
それぞれに別の顔を持っている。

単に岩に穴を開けた鳥の巣みたいな遺跡もあれば、
ローマ時代に作られたローマ風の遺跡も、
柱のように岩を削りだしたハリボテみたいな遺跡もある。

その外観も素晴らしいのだが、
中に入ればペトラ遺跡の真髄はこの岩自体にあることに気づくだろう。



龍の鱗。


それを連想させる石の紋様。

岩自体がいくつもの層が重なってできたもので、
それを切り出すとその層が模様のようになる。

赤や白や黒。
何種類もの飴をマーブル上に混ぜ合わせ包丁で切ったように、
切り口によって、角度によってその姿は待った区別のものになる。
四角く切り抜いた遺跡の内部の部屋は、
その石の紋様で埋め尽くされることになるのだ。

その姿が美しく僕らは何十分も四角い岩の部屋に留まった。
極上のアートを見ているような、そんな気分だった。


自然とは美しいものだけど、
人が手を加えることによって輝くものもある。

この荒れた土色一色の大地に、
誰がこんな豊かな色彩を想像するだろう。

人がこの地に手を入れなければ、
この岩の紋様は現れることはなかった。

この紋様をはじめて発見した遠い昔の誰かのことを思う。

きっと嬉しくて嬉しくて、笑ってしまったに違いない。
人の営みとは時に奇跡を生むのだ。




夕方になり暗くなってきたので、
歩き回りへとへとに疲れた足を引きずって、
観光用のラクダや馬車といっしょに入り口まで戻った。

それでもまだペトラ遺跡の半分ほどしか見て回れていない。
まだ見ぬ美しい何かがこの地にあることを思うと少し心残りはあるが、
きっと自然のことだから何世紀経ってもこの場所にあるに違いない。
なにせ何百年も人に知られず眠っていた場所なのだから。



「チャ~ラ、ラッチャ~♪チャララ~♪」


帰り道もまたこの曲を歌う。
宿に帰ったらインディージョーンズの鑑賞でもしようか。

夕焼けに染まった空の色。
赤や黒やオレンジや青。

空もまた、ペトラの魔法にかかったように美しい紋様を描いていた。

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