2009年3月27日金曜日

世界一周(41)アルゼンチン/木漏れ日の街で。











DATE:2009/03/27 Argentine - Mendoza -


朝、6時。

たどり着いたバスターミナルはまだ人もまばらで、
さらに日の出さえもまだだった。

そのまま宿に行くかを迷ったが、
まだ知らないアルゼンチンを早朝とは言え暗い道を歩くのは危険だと思い、
バスターミナルのベンチに腰掛けて、
荷物を体にくくりつけると、うとうとしながら時間を過ごした。



8時ごろ。

ようやく日が昇り始めたメンドーサの町。

観光案内所で地図をもらい、
町へ向かって歩き出した。

最初の横断歩道で欧米人のグループと会い、
彼らと共に宿を探すがさすが欧米人。

最初から自分のリストの中で
「ここは遠すぎるから無理」と思っていた宿へとがんがん進む。

その距離3キロ近く。

普段ならば別に苦にもしないが、
重いバックパックを背負ったままでのこの行進は苦行以外のなにものでもない。

しかも辿りついたところは満室!

欧米人達は近くの高い宿に泊まることにしたが、
僕はどうせならとバスターミナルの近くの宿へと、
また来た道を戻っていった。


メンドーサの町は驚くほどにきれいだ。

どこの道を通ってもきれいなプラタナスの並木が騒然と続いていて、
その両側をガラス張りのショーウィンドーが軒を連ねている。

アルゼンチンとは思ったよりも近代的な国なのかもしれない。

宿への道を歩きながらそんなことを思った。


宿にたどり着くと、
なんだかそのアットホームさにやられてしまい、
ほのぼのとした中庭でのんびりを時間を過ごした。

洗濯をしたり、ネットをしたり。

久々のインターネットで、
mixiの移行作業なんてのを始めてしまったのが運の尽き。

ツールをダウンロードしたり、
移行用プログラムを作ったり、
なんやかんや。
プログラミングなんて久しぶりにしたもので、
急に動き出した脳みそがあっという間に火を噴いた。

なんとかmixiから画像やら日記やらをダウンロードして、
あとはひたすらコピーして張り付ける地味ーな作業。
1ヶ月分ほどコピーしたら飽きてしまい、
今日の作業はおしまいということにした。
1年分を移行するのはいつのことになるのやら。


しかし昔の日記を読み返すのは面白い。

旅の始め。いろんな国の思い出。

文体も最初のころからは大きく変わっていて、
最初は高橋歩のようなメッセージ性の強いものだったのが、
いつの間にか深夜特急のようなエッセイ的なものへと変わっている。

日記を書くという作業。

やはりやっていて良かったと思う。

1年後、10年後。

旅が終わった後の僕は、これを読んでどんな事を思うのだろう。
そんな未来のことを思うとタイムカプセルのようでワクワクした。



それはそうとメンドーサはアルゼンチンワインの町である。

アルゼンチンワインの70%を生産しているというこの町。
何はなくともワイナリーめぐりは欠かせない。

そんなわけで情報を集めるために、
旅行代理店めぐりを始めた。



心地よい日の傾き始めた道を歩いていく。

ぽつぽつと斑点のように落ちた影。
染みのような影が道端に絨毯を広げている。
道を歩く人もまた洗練されて都会的だ。

この町の美しさは「影」にあるのだと思う。
町全体が並木道に覆われていて、
どこを歩いてもお日様と影の混じった世界の下だ。

空を見れば青々と茂る木々から空の青が覗き、
それを見上げながら歩くのは一枚の巨大な絵を眺めているようでもある。

路上に張り出したカフェテラスでは、
ゆったりとコーヒーを楽しみながら寛ぐ人たちが、
ただのんびりとその時間を味わっている。

4時ごろの町はシエスタのためなのか、
お店のシャッターがしまり人通りもうっすらとしている。

そんな静かな町を一人で歩くのもまた良いものだと思った。
木漏れ日の街の静かな午後ってやつだ。



アルゼンチン人なるものを観察しながら歩くのもまた面白い。

南米などみな同じ、と思っていたのだが、
やはり来てみるとそれぞれに違いがあり、
アルゼンチン人はどこかのんびりしているように見える。


そしてアルゼンチンの女性はとても美しい。

スペイン系の彫りの深い顔に大きな目を抱いた女性たちは確かに魅力的だ。
しかし、なぜアルゼンチン女性が美しいのか、
それはきっと日本人にはわからないかもしれない。


アルゼンチン女性がなぜ美しいか。

それはみな「痩せている」からなのだ。


日本人にはわからない、と思うのは、
それは日本人にとって痩せているというのはそう大したことではなく、
きわめて一般的なフツーのことなのだが、
世界へ出ればそれが羨望の的になることがわかる。


ヨーロッパ、南米。

この国々を旅してきた人はほぼ全ての国で、
女性があり得ないほどに太っていることに気づくだろう。


白人の遺伝子なのか、
それとも食べ過ぎのせいなのか。
それはちっともわからないが、
ともかくある年齢を超えれば女性はみんな「どーん」となる。
そりゃぁ、見事な「どーん」だ。

日本で言う「太った」などは比にならない。
何段もあるおなかをTシャツの下から惜しげもなく見せ付けるその姿は、
ある意味では潔いとしか言いようがない。

そりゃぁ、あれだけ食べればそうなるよ。
と言う気もしないでもない。
ともかく食べている量が半端ではないのだから。

日本を旅してきた欧米人に聞くところによれば、
「日本では定食を2つ食べる」のだそうだ。
そりゃそうだと思う。
僕はヨーロッパで定食をこの半分で良いのに。と思っていたのだから。

そんなわけで「どーん」な女性が多い中、
ここアルゼンチンはなぜか痩せている女性が多いのだ。

それは驚くべきことで、
しかも欧米人並みのスタイルとルックスとなれば、
「アルゼンチン女性は美しい」と言われる訳も納得できる。

そんな美しい。美しい女性を見ながら歩くのは、、、。いや、これ以上はやめとこう。



いくつか旅行代理店を回ってみるも、
何百とあるメンドーサのワイナリーの中から
お目当ての有名ワイナリーを回るツアーは見つからず
それはとりあえず明日へとお預けすることにした。

自分で回ることも可能らしいのだが、
この僕のスペイン語能力でワイナリーを巡ることは到底現実的ではなかったし、
そもそも予約の電話さえもかけられそうになかった。


代理店めぐりの途中で見つけたスーパーへより、
ワインの調査をしてみることにした。

フランス系大型スーパーマーケット、カルフール。
世界各国に触手を伸ばすその大型店舗はアルゼンチンにもあるようだ。

そしてそのワインの品揃えたるや・・・。

ずらり!と並んだアルゼンチンワイン。
思わずフランスを思い出すような品揃えだ。
さすがワインの町、メンドーサと言ったところだろう。
その何百もあるワインを眺めるのは相当に楽しい。

カベルネ・ソーヴィニオン、メルロー。
そしてシラーやシャルドネ。
ありとあらゆる種類の品種があり、
マルベックというアルゼンチンの固有種も多く売られている。

値段は安いもので2~5ペソ(約100~200円)。
ミドルクラスのワインで10~20ペソ(約300~600円)
最高品質のリザーブクラスで50ペソ(約1500円)
、と言ったところだ。

日本で輸出されているのはミドルクラス以上のものだが、
それでも日本で買うよりは5割ほどは安い。

暑い日だったので10ペソの白ワインを購入し、
それに合わせてチキンとトマトを買い込んだ。

アルゼンチンは噂どおりに肉が非常に安い。
何せ最高級の牛肉が1キロ500円もしないのだ。
こりゃぁ、自炊生活に熱がこもるってなものだ。


予想外に旅行代理店めぐりが買出しになってしまい、
宿から遠いスーパーから重い荷物を持って家路へと戻った。

夕暮れに染まるメンドーサの町は、
影が家や道路へと塗りこまれていくようで、
木々の影がどこまでもどこまでも伸びている。
熱い夕日がその影と混じり徐々に溶けていきながら夜へと変わった。




両面を少し焦げ目がつくまで炒めた後、
一度チキンを取り出してその油で刻んだ玉ねぎとニンニクを炒める。

玉ねぎが透き通り色がブラウンに近くなったら、
同じ鍋につぶしたトマトを放りこんで、
先ほどのチキンを入れてぐつぐつと煮込む。

隠し味にスープの素を少々、しょうゆをひと垂らし。


出来上がったチキンのトマト煮込み。付け合せにパスタを添えて。
そしてしっかり冷やしたアルゼンチンワインをグラスに注ぐ。


辿りついたワインの町。
今日もこうして贅沢なひと時が過ぎていく。

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