DATE:2009/02/25 Brazil - Rio de Janeiro -
祭りから一夜明け、一日目。
街は一気に平常心を取り戻したようで、
昨日散らばっていたゴミはいつの間にかきれいに姿を消していた。
これぞ宴の後。
それを感じるのには見事過ぎる変わりっぷりだ。
ただし店の店員だけはまだ祭りの夢から抜け切れないのか、
店番をしたままぐーすかと眠りこけている人もいる。
いくつかの店は閉まったままで、午後遅くになりようやくシャッターを上げ始めた。
いつもの毎日がまた始まり始めた。
そんな祭りの後の街。
僕らもまた現実へと急激に引き戻されていった。
現実問題として相方のカメラがなくなったのは事実であり、
生粋の写真狂である僕らにとってそれは中々にきつい現実であった。
という訳で本当は今日、リオの街を出る予定だったのだが、
一日延期をしてカメラ探しと盗難証明を作りに警察へと行くことにした。
この買い物という奴が意外に日本の常識が通じないことは意外と知られていない。
特に日用品や電化製品などを買おうと考えたらば、
まずその土地それぞれの常識を知ることからはじめなくてはならないのだ。
そう、どこで何が売っているということの常識が、
その国それぞれに違いがあり日本の常識で考えてもまったく見つからない事が多いのだ。
例えば日本でシャンプーなどの生活用品を買おうと思えば、
マツキヨのようなドラッグストアに行くかスーパーに行けば良いだろうが、
そもそもドラッグストアやスーパーなんてものがない国は多いし、
駄菓子屋みたいなお店のとんでもない所に置かれている事もしばしばある。
そういえば洗顔フォームを探してここ数ヶ月、
中東、ヨーロッパ、ブラジルを旅してきたがついぞ見つからず、
結局、これらの国に洗顔フォームはないという結論に至り最近は石鹸を使っている。
ヨーロッパでさえもこんな調子なので南米とくれば、推して知るという奴だ。
そしてこの電化製品という奴もまた中々厄介で、
日本と同じレベルの製品を買おうと思えばいくつものお店を渡り歩かなければならない。
日本で言うビックカメラやヤマダ電機など大型家電ショップは、
世界のどこでも見たことがないので、小さな店を一軒一軒しらみつぶしに見る必要がある。
それは秋葉原でのお買い物に似ているが、
残念ながら秋葉原のようにお店が集まった地域があることも少ないので、
町中を駆け巡るように家電屋を回ることになるのだ。
そんなわけでブラジルでのカメラ探しも中々に大変である。
何でも良ければすぐには見つかるが、
やっぱり写真好きとしては気に入ったカメラを買いたいと思うのは仕方ない。
運良く大きな町とあってさすがに家電ショップの集まる地域はあったが、
それでも100近くの屋台のような店を全て見て回る必要がある。
もちろんご他聞に漏れず値段などあってないような物なので、
もともと表示されていない価格を聞くことからはじめ、値段交渉まで全ての店で行うのだ。
とは言え泣き言を言っていても仕方がないので、
一軒一軒店をちらりとのぞき、まるでスカウターをつけているがごとく、
その店の商品を品定めして気に入った商品があれば値段を聞くという作業を延々と続けた。
後半になってくるともうめんどくさくなり、
暑いねーと現実逃避をしながらジュースやらアイスやらを30分毎に補給して、
もうなんかめんどくさい、とお互いにあきらめモードで帰宅した。
そう、目的の機種がないのだ。
いや、あるにはあるが色がまた微妙なのと値段が日本の二倍もするとの事で、
このまま諦めてそれにするか、また次の街サンパウロに望みをかけるかを選ばなくてはならない。
次の街、サンパウロは東洋人街もあるほどの日系人が多い街なので、
望みは高いとも言えるが、もしなかった場合はリオまでまた戻らなくてはならない。
結局、どうするかを決めきれず明日に持ち越しになった。
さて、もうひとつやらなくてはならない警察での盗難証明作り。
これもリオの街はなぜかめんどくさい。
警察などどこにでもあるはずなのに、
中心街の警察に聞くと
「イパネマで盗まれたのならば、イパネマに行かなくてはならない」
という意味のわからない理屈で行きたくもないイパネマに、
もう一度戻らなくてはならないようだ。
リオにもやっぱり管轄とか所轄の問題があるのかと思うと、
なんだか面白くもあったが、実際のところはただメンドクサイだけだった。
しかもそれがわかったのは午後5時を回ってから。
いまイパネマに向かえば確実に夜になり、強盗の恐れのある街を歩かなければならないのだ。
警察に行って強盗に会いました。
なんて洒落にならない現実が今ここにある。
仕方なく宿に戻り最低限のお金と荷物を持って、
カメラや携帯もろもろいつも持ち歩いている貴重品は宿に置いてイパネマへと出かける。
イパネマの警察署はこれまた良くわからないところにある。
ちなみにリオの観光案内所もコパカバーナのビーチから遠く離れた変なところにあり、
なんだかこの街は観光地であるはずなのにチグハグな所が多い。
セントロの警察官に教えてもらったイパネマの警察署への行き方を頼りにバスに乗り、
指示された場所でバスから降りると、案の定真っ暗な人通りの少ない場所。
やばいここは明らかに危険だ。そう肌で感じる。
ここは道を間違えるなんてもってのほか。一歩間違えば死に通じる。
でも警察署の近くで強盗に会うってなんだ?街中にだけじゃなく、
ここにも一人ぐらい警備員を置けよ、と悪態をつきながら現在地を確認し夜の街へと一歩踏み出した。
そういえば祭り中、以外で夜の街を歩いたのは初めてだ。
比較的、富裕層が多いというイパネマであっても、
ブラジルはブラジルであるらしく、これほどまでの危険を感じるとは思ってもいなかった。
角を曲がる度に一呼吸置きあたりを確かめ、
時たま後ろを振り返りながら僕らは一路警察署へと向かった。
無事にたどり着いた警察署は煌々と明かりが点り、
冷えすぎなぐらいクーラーが効いている明るい小さなオフィスだった。
既に何人かが事情聴取のようなものを受けているようで、
リオの街は噂に違わず危険であることがわかる。
名前と事件の内容を記入する用紙を渡され、
いくつもの記入事項に盗難の詳細事項を書き込んで自分たちの番が来るのを待った。
その間にも警察署にはひっきりなしに被害者が訪れる。
顔を青ざめて登場した被害者たちは涙を必死にこらえながら、
身の上におきた出来事を担当官に興奮気味に伝えようとする。
この時間に訪れる多くは強盗に会ったという人々ばかりで、
担当官に手渡された容疑者リストの顔写真を真剣に1ページづつめくっていた。
恐らくは前科があるという理由で作られた容疑者リストは100ページ近くにも及んでいて、
やはりこの街の裏側には多くの事件が起きているようだった。
それを見れば自分たちに起こったことなど高が知れている、なんて気分になるわけでもないが、
ともかく僕らは1時間ほど待たされて詳しい事情聴取をされただけで、
無事に盗難証明を受け取ることができた。
先ほど来た薄暗い道を戻りバスに乗り込むと、
昨日までとは打って変わって音のしない街をバスは走り宿へ向かって戻った。
祭りは終わった。
サンバのリズムに変わって鳴り響くクラクションの音が祭りの終わりを告げていた。
祭りの跡に取り残されたように僕らはバスから降りて人通りの少ない路上に立った。
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