DATE:2009/01/27 Greece - Athens -
なぜだかはわからない。
特に特別だと思ってもいなかったが、
パルテノン神殿の目の前に立つと感動の波に僕は襲われた。
アテネの町の中心に立つ小高い丘にあるパルテノン神殿は、
ギリシャの象徴と言ってもいい歴史的建造物だ。
もちろん神殿含め多くの関連する建築物が世界遺産にも登録されている。
良く知られているように、
現在神殿は修復中で神殿の周りをギブスのように、
鉄パイプの足場が囲んでいるが、それでもその偉容はひしひしと感じる事ができた。
神殿が建つアクロポリスの丘の上からは、
アテネの町を一望することができる。
そこから見るとこの丘一帯が、
ローマ時代の遺跡で取り囲まれていることがわかる。
ローマ劇場や、アゴラの町など、
白い大理石の石柱が丘の一帯には所狭しと立てられ、
そこが昔、とある大帝国の中心であったことを物語っている。
ところどころ修復した建造物が、
新し過ぎて単なる新築の建物にしか見えないのはご愛敬と言ったところか。
ギリシャ人の考えることは良くわからない。
見下ろしたギリシャの町並みは何か物悲しい雰囲気をしている。
それは最近起こった暴動のせいなのか、
そもそも停滞する経済のせいなのかはわからないが、
ギリシャの都市は最初に訪れたテッサロニキをはじめ、
同じような廃退感を感じさせるのはなぜなのだろう。
昨夜たどり着いたアテネの町に立ったときの、
ピリピリとした薄暗い雰囲気を思い出した。
夜というのは不思議なもので、
その町の雰囲気が如実に現れる。
そしてここアテネの町は今まで旅をしてきた中でも、
最大限に警戒心を刺激させる町だった。
夜中たどり着いた僕が次の町への行き方を聞きに観光案内所に行くと、
呆れるほど横柄な態度のスタッフに無言のまま時刻表を指差され、
ギリシャ人の印象はますます悪くもなった。
丘の上に吹く風を心地よく思いしばらくのんびりしていると、
誰かが僕を呼び止めた。
「ここの石を持ち帰ってはいけません」
え?
最初は何を言われたのかがわからなかった。
服装を見るとどうやら警備員のようだった。
戸惑っていると女性警備員がもう一度僕に同じ言葉を言い、
「あなた石を拾ったでしょう」と付け加えた。
なんだそりゃ。そう思い「拾ってないよ」と言うと、
その女性は明らかに疑惑の顔を浮かべている。
その態度になんだかムカついてきて、
「調べなよ」とポケットを指差すと、
めんどくさそうに「いいわ。信じるわ」と横柄な態度のまま向こうへ行ってしまった。
信じる?なんだそりゃ。間違っていたら誤るのが道理だろ?
丘を降りるころにはすっかりギリシャ人が大嫌いになっていた。
横柄な態度。笑わない店員。道を聞いても知らん振りの人々。
こんな人々が暮らしている町など、停滞感が漂っていて当たり前だ。
数ヶ月前、ある学生が警察官に殺された。
それがつい先日ギリシャで起きた暴動のきっかけだったという。
暴動は瞬く間にギリシャ全土に広がり、
銀行や商店などが軒並み襲われたのだそうだ。
きっかけは何にせよ、
結局は不満の募る一部の暴徒が暴れる理由にしかならなかったそれは、
単に憂さ晴らしになってしまったそうだ。
この町の人々を見ているとそれもわかる気がする。
ただ与えられた仕事を嫌々しながら生きている人々。
沢山の未来を諦め顔で見つめる人々。
そこにはアジアの成長の熱気もなく、
ヨーロッパという過去の栄光とプライドにすがっているようにも見える。
行き詰った現在に革命を起こす気力すらも感じられない。
僕らが世界に対してできることなんて、たった2つしかないのだ。
全てを受け入れて満足して生きるか、革命を起こすかのどちらかだ。
僕は諦めや不満をコレクションして生きるなんてまっぴらごめんだ。
過去の栄光の跡。
僕が感じたアテネの町はそんなところだった。
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