2009年4月5日日曜日

世界一周(40)チリ/乙女の島











DATE:2009/04/05 Chile - Castro -


朝9時にプエルト・モントで乗り換えたバスはそのままフェリーへと乗り込み、
久しぶりの船の旅を楽しんだ。

たった30分のその船旅だったが、
ここが島だということを示すには十分すぎるイントロダクションだ。


船がチロエ島へとたどり着くと、
「ようこそ!」とでも言うように曇り空から青空が見え始め、
雲は高速で流れてあっという間に青空へと変わった。

そのドラマのようなイントロの後には、
雨に濡れてキラキラと輝くのんびりとした田舎道が続いていく。

その輝きに僕は「赤毛のアン」のことを思い出す。
映画で見たカナダのプリンス・エドワード島の風景も確かこんなだった気がする。



そんな景色の中にはやはりかわいい小さな家が似合う。

黄色や水色でペイントされた小さなちょこんとした家が、
牧草地の中の丘の上にぽつりぽつりと建っている。

細くうねった道にはところどころ鳥小屋のような、
かわいい木のバス停が置かれ、
バスは時たま人を降ろし、時たま人を飲み込んだ。


のんびりとした牛が草を食み一日を生きている。

そんな景色の中を2時間ほど走ってチロエ島の中心地カストロの町へとたどり着いた。



なんだかこのチロエ島というのは乙女チックな場所なのだ。

そんなわけで適当に選び出した宿の部屋は、
水色の壁にフリフリのレースがついた枕という、
もう何十年も前のフランス映画に出てきそうな部屋だった。

汚れたバックパックを部屋に下ろす。


うわぁ、俺この部屋似合わねー!


二日ほどひげを剃っていなかったため無精ひげの28歳のバックパッカー。
なにもまぁ、こんな乙女チックな部屋を選ばなくても。。。

後から他の部屋を見てみたがどうやらこの部屋だけひときわ乙女な香りがする。
その中からこれを選ぶなんて何かの嫌がらせだろうか。

そんなわけでそのフリフリのレースに囲まれて、
28歳の男バックパッカーは居場所なくただ笑うしかなかったのであった。



30分もゆっくりするとなんだか居たたまれなくなったので、
急いで身支度をして町の外へと飛び出した。

が、町も町でやっぱり乙女チックなところで、もうやたらかわいい。

こうなったらもう開き直るしかなく、
僕は乙女の海へと沈んでいったのであった。


と、こうは言って見たもののカストロの町は案外楽しい。

丘を降りればきれいな湖が広がっているし、
その町並みも少女趣味ではあるがかわいくてほほえましい。

なんだかシルバニアファミリーにでもなってしまったようだw


湖をぺろりとなめるとやっぱり塩の味がした。

ここは入り組んだ入り江の一部なのだろう。
ここから入り江は太平洋へとつながっている。
ここはやっぱり島なのであった。




シーズンオフなのか賑わいを欠く湖畔のお土産屋を冷やかして、
一軒のレストランに入った。

5ドルもしないサーモンのフライを頼むと、
特大のサーモンが皿に乗せられて運ばれてきた。

チリはやっぱり魚がうまい。

ふわりとやわらかいサーモンにかぶり付くと、
あっという間に食らい尽くし、あとはのんびりとビールを飲んだ。



まったりしていると隣のテーブルのおっさんが話しかけてきて、
いつの間にかグラスにビールが注がれ、
なんだかんだまったく会話にならない会話を続けていると、
1本のビンが空き、2本のビンが空き、そして4本のビールが空いた。

おっさん飲み過ぎじゃ!と言っても、
そのおっさんは止まることなくビールを飲み続ける。
おごられたものを断るわけにもいかず、
おっさんに付き合って僕もビールを飲み続ける。

チリのビールは1リットル入りのビンに入っている。
つまりは既に一人2リットルは飲んでいると言うことだ。

そんなことにはかまわず、4本目のビールが空になる前に、
5本目のビールを頼んだのであった。


おっさんなぜか上機嫌。
そしてなぜかケーキがふるまわれる。

そんでもって「はっぴば~すでぃとぅーゆー♪」の音楽が。
スペイン語の歌詞だったのでまったくわからなかったが、
なんとおっさんの誕生日だったのだ。

どーりでおっさん機嫌が良いはずだ。


僕も負けずにハッピバースディを歌い、
日本語で「おめでとう」と言い、
なぜかお礼にダンスを踊った。

5本目のビンが空き、6本目のビンが空くと、
すっかり夜になってしまったのでそろそろ行くか、とおっさんと店を後にした。





ちなみにそのおっさんがやっぱりゲイで、
帰り道にキスを迫られ必死の思いで逃げ帰ったことは、
僕にとってはいまさらなんら特別な出来事ではないが、
忘れないようにここにメモをしておくことにする。



乙女な町では誰もが乙女になりたがる、ということだ。なんて。

2009年4月4日土曜日

世界一周(40)チリ/あでぃおす







DATE:2009/04/04 Chile - Santiago -


「今日はなんもしないの?」
「うん、眠い。なんにもしなーい」
「じゃぁ、ここでのんびり寝ますか」

別れの日、交わした会話はそんなもんだ。

さすがにもうやることもないサンティアゴの街。
僕らは公園の芝生に寝転がり、ただ時を過ごした。

何時間も何時間も。


やがて時が来てバスの時間になり、
僕はパタゴニアの大地を目指すために北へ、
彼女はウユニ塩湖への道を目指すために南へと旅立った。

「またね。元気で」

何度繰り返したかもわからないその言葉もこれで最後だろう。
次に会うときにいう言葉は決まっている。

「ただいま」きっとそう、日本で会うときに言うだろう。



先に出発する僕のバスを見送る彼女の姿がフロントガラス越しに見えた。
彼女もまた僕を見つけうれしそうに手を振った。

音を立てて動き出したバスは窓越しの彼女の姿を消し去って南へと走り出した。


さぁ、パタゴニアの大地へ。

彼女の笑顔を思い出しながら僕の心はゆっくりと一人旅モードへと切り替わっていった。

2009年4月3日金曜日

世界一周(40)チリ/「いくら丼が食べたい」







DATE:2009/04/03 Chile - Santiago -


「いくら丼が食べたい」

彼女が朝一番に言い出した言葉はそれで、
そう言えばサンティアゴに着いてからずっとそんな事を言っている気がする。

財布が盗まれてめちゃくちゃになってしまったが初日の予定はそれで、
次の日に市場まで行ってみたがやっぱりイクラは無く
(それを探して回っていたら市場でシャケベイベーという言葉の大ブームが起きたほどに探したが)
残る望みは日本食レストランぐらいしか残っていなかった。

そんな訳で今日の目的地は日本食レストラン、その名も「ハポン」。
(スペイン語で日本はJAPON、ハポンと呼ぶ)


初日の反省を生かし今日は他のものに目をくれずに進むことにした。
そもそも初日に同じ場所を目指していたのに、
途中のレストランの美味しそうな写真に目がくらみ店に入ってしまったのが盗難にあったきっかけでもあったのだ。
という訳で今日はお腹が空いてもガンガン進む。

が、、、やっぱり目は他に振れてしまうもので、
結局お土産屋を冷やかしてみたりショーウィンドーをのぞいて見たりで、
30分で着くはずの予定がいつの間にか2時間かかってようやく目的地のレストランへ辿り着いたのであった。


海外における日本食レストランというのはある意味で「高級レストラン」を意味する。
ここ「ハポン」もまた日本人の駐在員やチリ人の高所得層が利用するレストランである。

と言うのは入ってから気づいた事で、
何も知らずに入った僕らは寿司カウンターが真っ直ぐと伸びる店構えに緊張を覚える。
中にいるお客さんもスーツ姿の人が多く、Tシャツの僕らは直ぐに場違いな所へ来たことを悟った。

とは言え元々は肩書きだけは立派なものを持っていた時代もある二人は、
何食わぬ顔で慣れたふりをして受付に「二名」と告げて奥の座敷を選び、
座敷というよりは掘りごたつのような所に靴を脱いで座った。

ふぅ。と、一息ついた僕らはウェイトレスがまず最初に持ってきたお絞りに驚き、
そう言えば日本って言うのはこういう所だったと思い出した。
まったくもって母国はすばらしい。

手渡されたメニューを見てその美味しそうな写真と品揃えに唾を飲む。
最初、そのメニューの多さに何にしようかと悩むことから始めたが、
そう言えば今日はいくら丼を食べに来たのだ、と思い出しメニューの中に「いくら」の文字を探した。


「いくら丼。ないね。やっぱり」

そう残念そうにつぶやく彼女。
メニューの中に見つかった「いくら」の文字は寿司ダネの中の一つで、
あの赤い粒粒がドーンと乗ったいくら丼の文字はどこを探しても見つからなかった。

しかし市場でも見つからなかったしどこに行ってしまったのだろう、鮭の子供たちは。
サーモン自体はサンティアゴでもビーニャの市場でもちらほら見かけたので、その卵だけが無いわけが無いのだが、
なぜか市場にも見つからず、日本食レストランでさえメニューとしては大きく取り上げられていない。
もしや内臓もろとも捨てられてしまっているのでは。なんてことが冗談とは思えないほど、いくらの影はチリでは気薄だ。
食文化の違いとは言えなんて勿体無い。

しかし考えてみると価値なんてのはそんなものなのかもしれない。
目の前にあるたくさんのもの。その一つ一つに価値を見出すか否かはその人次第なのだ。
自然。文化。個性。気づかぬ内に僕らは本当に沢山のものを失っているのかもしれない。
手の中で光る幾つもの宝石の光を僕らはちゃんと見つめられているのだろうか。


なんて事を食事中に考えていたわけも無いが、ともかくいくら丼がないことは確からしい。
寿司のいくらを大量に頼み丼にするというバブリーなアイデアも思いついたが、
日本よりも高い寿司を大量にオーダーするほどの度胸は無く、
結局はそれぞれ好きなメニューと、いくらの寿司を1つ頼むことで妥協した。
ともかく「いくら」は食べられるのだ。文句は言わないことにしよう。


僕が頼んだのは「鍋焼きうどん」でマサミが頼んだのは「うなぎ丼」
どちらも南米の地で食べるには十分過ぎるほど特別感がある。

期待を裏切らず運ばれてきた料理は、まさに日本の香りで僕らの鼻腔を刺激した。

「いただきまーす」

と、久々に手にした箸でお互いの料理を口に運ぶ。

言うまでも無い。うまい。

完璧と言えるほどのうどんの出汁。しっかりとした鰹出汁。
思い描いていた味と変わらない日本の味がゆっくりと笑顔にさせる。

マサミの鰻にも手を伸ばす。これも美味い。
どこから手に入れたのかは知らないが冷凍だとしても十分に美味い。
そして最後は、やっぱりいくら。

最初の料理が無くなったころちょうど良く運ばれてきたいくらの寿司に早速手を伸ばす。

あぁ。。いくらだぁ。。

なんなんだろうこの特別感。
ウニもトロも良いが、なぜかいくらと言うのは味以外でも特別な感じがする。
久しぶりに食べたいくらは口の中でプチプチとはじけ、じゅわりとあの味が広がった。


「あ。。写真撮るの忘れた」

と思い出したのはすっかりいくらを食べ終えて余韻に浸っているその頃で、
余りにもがっついていた僕らを思い出して笑った。
そんなわけで、あんなにも欲していたいくらの写真は撮っていない。あしからず。



そんなわけで念願のいくらにも巡り合えた後は、
そう言えばやっていなかったサンティアゴ観光をちょちょいと済ませ、
何故かずらりと並ぶ武器屋(なんと手裏剣まである)に驚いた後にホテルへと戻った。




ホテルに戻り既にパッキングされガレッジルームに置かれた荷物を見て考える。
そう、実は今日お互いの別々の場所へ出発する予定で既にチェックアウトを済ませていたのだ。

考える。考える。考える。決めた!と思っても、もう一回考える。


「んーーー、、もう一泊!」

と今日の日本食の幸せ感からか、なし崩しにもう一泊することを決めた。

そうなれば正真正銘最後の夜。
これから先、僕らが世界のどこかで再会することはおそらく無い。
次に会うのは日本、つまりは半年近く後の話だ。
それならば今日を精一杯楽しまない訳にはいかない。


最後に一本残っていた最高級のアルゼンチンワインを楽しむために
スーパーでチーズを買出し、サラダ用のアボガドなどなどを買い込んだ。

帰り道のピザ屋で最高のピザと最高のビールを飲んだ後、部屋に戻りくるくるとコルクにスクリューを差し込んだ。


「うまいっ!!!!」

ボデガ・ノートン、2003年、マルベック、赤。

今まで飲んだことがある最高級のフランスワインと比べても遜色ない味が僕らの喉を潤した。

やっぱり最後の夜はこうでなくっちゃね。
そうやって二人で笑いあった。


また会う日まで。


それまで僕らは笑顔でいよう。
そう思い、僕はとりあえず今日の夜に笑った。





Special Thanks, ぐれーとアルゼンチンワイン♪

2009年4月2日木曜日

世界一周(40)チリ/今日は喧嘩の日







DATE:2009/04/02 Chile - Santiago -


二人でいればそりゃ喧嘩もすることはある。

という訳で今日は喧嘩をして今は一人で夜ご飯を食べているところだ。
豪勢にステーキを頼みもちろん側にはビールを置いている。

なぜか南米は二人の気が合わず最近良く喧嘩をしている。
些細な事ばかりなので直ぐに仲直りしてしまうが、
勝手に怒って勝手に素直になる相方に他人事のように女の子って大変だな、なんて思っている。


そう言えば前に好きだった子とは殆ど喧嘩をしたことがなかったな。そんな事を思った。
性格が似てたからかお互いにあまり怒るということ自体がなかったが、
そもそも争いが起きるほど近い関係じゃなかったのかも知れない。
だから、喧嘩もできる今の関係はむしろ健全なんじゃないかとも思ったりもする。

それでもご飯さえ食べていれば幸せだった前の彼女との関係を思えば、
ご飯の時に怒るのはちょっとルール違反じゃねーのと思ったりもする。
友達。彼女。家族。誰であろうがご飯がまずくなることをする人とは、話もしたくなくなるというものだ。
今日食べた海鮮スープ自体が不味かったことは外に置いておくとして。


そんな一日だったが、
結局のところ今は今でメンドーサから持ってきた白ワインで二人で乾杯なんかしていたりする。
赤ワインならアルゼンチンのイメージを覆すほどに美味しいワインで喧嘩なんか忘れて楽しんでいたりする。


なんだかんだ言って今の二人の関係がやっぱり心地よかったりもする。

2009年4月1日水曜日

世界一周(40)チリ/サンティアゴの盗賊







DATE:2009/04/01 Chile - Santiago -


「・・・マジ?」
「うん・・・マジみたい・・・」

レストランを出て数歩歩いただけ。
曲がり角を曲がったばかりの所で気づいた時にはもうマサミのカバンのチャックは開いていて
そこからは既に財布が抜かれていた。


一夜明け、さておいしい物でも食べに行くかと歩き出した僕たちの予定は一気に消え去り、
そして同じく僕らのテンションも一気に下がっていった。

サンティアゴ恐るべし。なんて冗談でも言っていられる状況ではないが
ほんの1分にも満たない時間で起こった出来事はやはりプロの仕業としか思えなかった。


「帰ろっか」

そう言って警察に行くのも明日にしてともかく部屋へ戻った。

しばらく現実感を取り戻すまでぼーっとした後に、
カードを止めたりその他もろもろの事務手続きをして今日一日が終わった。


うぇーん。そんな時は泣くっきゃない。