2009年2月25日水曜日

世界一周(37)ブラジル/祭りの跡に







DATE:2009/02/25 Brazil - Rio de Janeiro -


祭りから一夜明け、一日目。

街は一気に平常心を取り戻したようで、
昨日散らばっていたゴミはいつの間にかきれいに姿を消していた。

これぞ宴の後。

それを感じるのには見事過ぎる変わりっぷりだ。
ただし店の店員だけはまだ祭りの夢から抜け切れないのか、
店番をしたままぐーすかと眠りこけている人もいる。
いくつかの店は閉まったままで、午後遅くになりようやくシャッターを上げ始めた。

いつもの毎日がまた始まり始めた。



そんな祭りの後の街。

僕らもまた現実へと急激に引き戻されていった。

現実問題として相方のカメラがなくなったのは事実であり、
生粋の写真狂である僕らにとってそれは中々にきつい現実であった。


という訳で本当は今日、リオの街を出る予定だったのだが、
一日延期をしてカメラ探しと盗難証明を作りに警察へと行くことにした。


この買い物という奴が意外に日本の常識が通じないことは意外と知られていない。

特に日用品や電化製品などを買おうと考えたらば、
まずその土地それぞれの常識を知ることからはじめなくてはならないのだ。

そう、どこで何が売っているということの常識が、
その国それぞれに違いがあり日本の常識で考えてもまったく見つからない事が多いのだ。

例えば日本でシャンプーなどの生活用品を買おうと思えば、
マツキヨのようなドラッグストアに行くかスーパーに行けば良いだろうが、
そもそもドラッグストアやスーパーなんてものがない国は多いし、
駄菓子屋みたいなお店のとんでもない所に置かれている事もしばしばある。

そういえば洗顔フォームを探してここ数ヶ月、
中東、ヨーロッパ、ブラジルを旅してきたがついぞ見つからず、
結局、これらの国に洗顔フォームはないという結論に至り最近は石鹸を使っている。
ヨーロッパでさえもこんな調子なので南米とくれば、推して知るという奴だ。



そしてこの電化製品という奴もまた中々厄介で、
日本と同じレベルの製品を買おうと思えばいくつものお店を渡り歩かなければならない。

日本で言うビックカメラやヤマダ電機など大型家電ショップは、
世界のどこでも見たことがないので、小さな店を一軒一軒しらみつぶしに見る必要がある。

それは秋葉原でのお買い物に似ているが、
残念ながら秋葉原のようにお店が集まった地域があることも少ないので、
町中を駆け巡るように家電屋を回ることになるのだ。


そんなわけでブラジルでのカメラ探しも中々に大変である。

何でも良ければすぐには見つかるが、
やっぱり写真好きとしては気に入ったカメラを買いたいと思うのは仕方ない。

運良く大きな町とあってさすがに家電ショップの集まる地域はあったが、
それでも100近くの屋台のような店を全て見て回る必要がある。

もちろんご他聞に漏れず値段などあってないような物なので、
もともと表示されていない価格を聞くことからはじめ、値段交渉まで全ての店で行うのだ。

とは言え泣き言を言っていても仕方がないので、
一軒一軒店をちらりとのぞき、まるでスカウターをつけているがごとく、
その店の商品を品定めして気に入った商品があれば値段を聞くという作業を延々と続けた。

後半になってくるともうめんどくさくなり、
暑いねーと現実逃避をしながらジュースやらアイスやらを30分毎に補給して、
もうなんかめんどくさい、とお互いにあきらめモードで帰宅した。


そう、目的の機種がないのだ。


いや、あるにはあるが色がまた微妙なのと値段が日本の二倍もするとの事で、
このまま諦めてそれにするか、また次の街サンパウロに望みをかけるかを選ばなくてはならない。

次の街、サンパウロは東洋人街もあるほどの日系人が多い街なので、
望みは高いとも言えるが、もしなかった場合はリオまでまた戻らなくてはならない。

結局、どうするかを決めきれず明日に持ち越しになった。



さて、もうひとつやらなくてはならない警察での盗難証明作り。

これもリオの街はなぜかめんどくさい。

警察などどこにでもあるはずなのに、
中心街の警察に聞くと

「イパネマで盗まれたのならば、イパネマに行かなくてはならない」

という意味のわからない理屈で行きたくもないイパネマに、
もう一度戻らなくてはならないようだ。

リオにもやっぱり管轄とか所轄の問題があるのかと思うと、
なんだか面白くもあったが、実際のところはただメンドクサイだけだった。


しかもそれがわかったのは午後5時を回ってから。
いまイパネマに向かえば確実に夜になり、強盗の恐れのある街を歩かなければならないのだ。

警察に行って強盗に会いました。

なんて洒落にならない現実が今ここにある。

仕方なく宿に戻り最低限のお金と荷物を持って、
カメラや携帯もろもろいつも持ち歩いている貴重品は宿に置いてイパネマへと出かける。


イパネマの警察署はこれまた良くわからないところにある。
ちなみにリオの観光案内所もコパカバーナのビーチから遠く離れた変なところにあり、
なんだかこの街は観光地であるはずなのにチグハグな所が多い。

セントロの警察官に教えてもらったイパネマの警察署への行き方を頼りにバスに乗り、
指示された場所でバスから降りると、案の定真っ暗な人通りの少ない場所。

やばいここは明らかに危険だ。そう肌で感じる。

ここは道を間違えるなんてもってのほか。一歩間違えば死に通じる。
でも警察署の近くで強盗に会うってなんだ?街中にだけじゃなく、
ここにも一人ぐらい警備員を置けよ、と悪態をつきながら現在地を確認し夜の街へと一歩踏み出した。


そういえば祭り中、以外で夜の街を歩いたのは初めてだ。

比較的、富裕層が多いというイパネマであっても、
ブラジルはブラジルであるらしく、これほどまでの危険を感じるとは思ってもいなかった。

角を曲がる度に一呼吸置きあたりを確かめ、
時たま後ろを振り返りながら僕らは一路警察署へと向かった。


無事にたどり着いた警察署は煌々と明かりが点り、
冷えすぎなぐらいクーラーが効いている明るい小さなオフィスだった。

既に何人かが事情聴取のようなものを受けているようで、
リオの街は噂に違わず危険であることがわかる。

名前と事件の内容を記入する用紙を渡され、
いくつもの記入事項に盗難の詳細事項を書き込んで自分たちの番が来るのを待った。


その間にも警察署にはひっきりなしに被害者が訪れる。

顔を青ざめて登場した被害者たちは涙を必死にこらえながら、
身の上におきた出来事を担当官に興奮気味に伝えようとする。

この時間に訪れる多くは強盗に会ったという人々ばかりで、
担当官に手渡された容疑者リストの顔写真を真剣に1ページづつめくっていた。

恐らくは前科があるという理由で作られた容疑者リストは100ページ近くにも及んでいて、
やはりこの街の裏側には多くの事件が起きているようだった。


それを見れば自分たちに起こったことなど高が知れている、なんて気分になるわけでもないが、
ともかく僕らは1時間ほど待たされて詳しい事情聴取をされただけで、
無事に盗難証明を受け取ることができた。



先ほど来た薄暗い道を戻りバスに乗り込むと、
昨日までとは打って変わって音のしない街をバスは走り宿へ向かって戻った。


祭りは終わった。

サンバのリズムに変わって鳴り響くクラクションの音が祭りの終わりを告げていた。


祭りの跡に取り残されたように僕らはバスから降りて人通りの少ない路上に立った。

2009年2月24日火曜日

世界一周(37)ブラジル/踊る阿呆どもがいま笑う












DATE:2009/02/24 Brazil - Rio de Janeiro -


まだまだお祭りは続いているが今日はイパネマ海岸でのんびり、と決めた。

昨日ゆっくり休んだおかげで体調は万全、
フルチャージで南米屈指のビーチへと望む。


街に出ればまだお祭りモードは続いてはいるが、
一応は今日で全てのイベントが終了し明日からは通常の街へと姿を変えるはずだ。
しかし、この街にあふれるムードはいまだ火照りを冷ましていない。

既に冷め始めた僕のお祭り魂が
昨日行われたはずのサンボドロモのカーニバル二日目を
せめてテレビで見ればよかったと、ほんの少しだけ悔しがっている。


ま、それはそれとして。
今日はビーチでのんびりだ。
イパネマ海岸へと向かうバスへと二人で勢い良く乗り込んだ。


イパネマ海岸は知らなくても、
ボサノバの名曲「イパネマの娘」は知っている人は多いと思う。

そしてそのイパネマとはこの場所のことであり、
つまりイパネマの娘とはビーチで遊ぶピチピチギャルのことである(と思う)

この曲を作ったアントニオ・カルロス・ジョビンが何を考えていたのかは知らないが、
イパネマ海岸はコパカバーナに比べて少し高級な雰囲気が漂っていて、
街に並ぶお店もまたお洒落なお店が多い。

つい久しぶりのイケテルお店に興奮しウィンドーショッピングが長くなる。
ビーチそっちのけで街歩きを楽しみ、
やっとの事で今日の目的を思い出し、ワインとおつまみを買ってビーチへ出かけた。


ちょっとビーチに行く前にトイレへ。と、近くのハンバーガ屋でトイレを借りた。
二人とも用を終えて、さてビーチへと向かった時のことだ。


「あれ?カメラ忘れた」とマサミが言う。

きっとトイレに忘れてきたのだろうと、
いま出たお店へと引き返した。


そしてカメラは既に持ち去られた後であった。


マジ?と一瞬の出来事に戸惑う。
お店を出たのはほんの1分も前だ。それなのに。。

お店の店員も一緒に探してくれたがやはりないものはない。
置き忘れた荷物が無事に残っているのなんて日本ぐらいのものだ。
マサミの後に現地人らしいおばさんが入ったとの事だが、既にも抜けの空だった。
やはりブラジルはブラジルだった。


ビーチモードだった二人のテンションも急降下。
しかもそのカメラはスペインで盗まれて、新規で買って1ヶ月もしていないものなのだ。
いくら保険が利くからと言っても、同じカメラは二度と戻ってこない。
運が良かったのは丁度昨日、写真をDVDに焼いていたことで、
失ったのはカメラぐらい、という事だった。

とはいえそんな事実がテンションを上げてくれる訳もなく、
仕方なく僕らはビーチへととぼとぼと向かった。


という訳でビーチに着いてからはいきなり酒乱モード。

「なにがイパネマだ!大嫌いだ!!!」
「持っていった奴!家族全員罰が当たれ!」

と、ワイン片手に暴言を振りまく。
イパネマ娘のお尻やビキニ姿などそっちのけで振りまく。でもちょっと見る。


そんなこんなでワインを開け、ビールを2本ほど飲んだ頃には、
すっかりマサミはビーチに眠りこけ、僕はゆっくりと沈む夕日を眺め、
イパネマ海岸の一日は過ぎていった。



暗くなる前にとイパネマ海岸を出て街に戻り、
最後のお祭りモードを楽しむ街へと飲みなおしに外に出る。


昨日まで大音量が鳴り響いていた会場もいまはすっかり音を潜め、
名残惜しそうに残る街の人たちがビールを片手にうろついているだけだ。

祭りの後の道路はもの凄い量のゴミが溢れ、それもまた物悲しさを演出している。
明日になればきっとこの散らかった祭りの残骸もきれいにされ、
街はいつもの姿へと姿を変えてしまうのだろう。
漂うアルコールの混じった空気の匂いさえも、それが愛おしく思えた。


とはいえまだ街は火を消してはいない。

街の一角では未だ屋台が軒を連ね、ビールが飛ぶように売れる場所もある。

僕らもその中に飛び込んで祭りの匂いを少しでも染み込ませようと、
冷たく冷えたビールを浴びるように飲んだ。

屋台の周りの店からはサンバやらレゲエやら好きかってな音楽が流れる。
もう音さえあれば何でもいい、そんな感じだ。
僕もまたごちゃ混ぜになった音楽の中、自然と体を揺らしている。

レゲエの音に合わせ皆が好き勝手に体を揺らす。
ダンスなのかさえもわからないそのめちゃくちゃな動きは
ものすごいエネルギーとなって僕らの心を躍らせる。

国籍も性別も年齢も地位も無関係に、ただそこには笑顔があった。




祭りは終わった。



それがどうした?

ここにはまだスマイルとセルベージャがある。



踊る阿呆どもがいま笑う。

2009年2月23日月曜日

世界一周(37)ブラジル/ぐーすか











DATE:2009/02/23 Brazil - Rio de Janeiro -


ぐーすか。ぐーすか。ぐーすか。ぐーすか。


以上。今日一日終わり。



それでも祭りの音は鳴り止まない。

2009年2月22日日曜日

世界一周(37)ブラジル/カーニバル!!!!!



























DATE:2009/02/22 Brazil - Rio de Janeiro -


ダンス!ダンス!ダンス!ダンス!!!!!!

サンバのリズムで踊り狂う!
そう、ここはリオ、もちろんここで行われるのはカーニバル!

リオのカーニバル会場サンボドロモには、
たくさんの人があふれ開幕1時間前から関取合戦で大にぎわい。
なんとか席を確保し売り子から買ったビール片手に宴の始まりをわくわくしながら待つ。


会場はすでに超満員。
遅れてきた人は立ち見になり、それでもサンバのリズムに乗りながら、
ステップを踏んでパレードが始まるのを待っている。

サンボドロモはまさに「カーニバル専用の会場」で、
コンクリート製の立派な観客席が300メートルほどの直線の左右に備え付けられている。
左側には野球観戦のような席。
右側にはブースのようなボックス席が備え付けられている。
この直線と観客席だけの会場は、
カーニバル以外には何の役にも立たないであろう代物で、
年一度。この瞬間だけのための祭りの舞台だ。
その辺の祭りにかける情熱がまさに「リオのカーニバル」である。





ドゥン!!!!!!

会場がざわめく。
カーニバル始まりの花火が会場に鳴り響き、
その後に軽快な太鼓のリズムが鳴り渡った。


うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


会場中がうねるように叫び声をあげる。
宴の始まり。歓喜の叫び。

サンバのリズムに合わせて地元の人たちは、
手渡された歌詞カードの歌をみんなで歌っている。
各チームごとにオリジナルの歌があるようで、
長年慣れ親しんだその歌をみな笑顔で歌い上げていた。

会場の端のほうにはすでにカーニバルの舞台が見えている。
神輿のようなその舞台を囲むようにたくさんのダンサーたちが、
パレードが始まるのをステップを踏みながら待っている。


その数5000人!!!


1チームの参加人数はなんと5000人を超えるのだ。
それがいくつもの舞台を囲むように目の前の直線を踊り歩いていく。

その中にはもちろんイメージにあるような、
セクシーな衣装を身にまとったサンバクイーンが含まれる。

何万人ものサンバクレイジー達が会場の端で今か今かと待ち受けているのだ。

ちなみに今日の参加チームの数は6チーム。
2日に分けて行われるカーニバルの初日。
9時から始まるその宴は、なんと朝5時まで続くのだ。



ふ、と曲調が変わる。

会場がいっきに膨れ上がった!!!

パレードの始まりだ!!!



先頭にはサンバクイーンが堂々とサンバの激しいステップを踏みながら、
ゆっくりと前進してくるのがわかる。
サンバ独特の腰をくねらせるセクシーな仕草が観客を沸かせる。

会場のカメラマンたちはそれを夢中で追いかけ、
クイーンはそれに向かいなまめかしいポーズを見せつけた。

クイーンの後方には何百人もの踊り子たちが、
くるくると絵のようなカラフルな衣装を纏いながら踊っている。
何度も練習しつくされた振り付けを各自楽しそうに振舞っている。

何百人もの踊り子たちの後ろには踊りの舞台。

舞台には選ばれしサンバクレイジー達が上り、
得意のダンスを思う存分に見せ付ける。

舞台は各チームごとに工夫を凝らしていて、
水を撒き散らすものや、電気仕掛けの巨人や昆虫、
宇宙をテーマにしたチームはスタウォーズまであるのだ。
CGのようなリアルさで観客の目を楽しませくれる。
それが1チームで10近くあるのだから、
リオのカーニバルがただの遊びではないことが良くわかる。


どぅっ!!

と観客が一気に沸いた。
何事かと思って前を見ると、
おっぱい丸出しのサンバクイーンが目の前で激しい踊りを見せつけていた。

観客はおっさんも若者も大興奮だ。
これでこそリオのカーニバル!!


1つ目のグループがパレードを終えると、
みなは一斉に座り込み次へと心の準備を始める。

中には熱が覚めやらず立ち尽くしたまま体を揺らす人もいて、
会場内は熱気の渦に巻き込まれいった。


しっかし1グループ約1時間。しかもそれが6グループ。かつ朝まで。
その間立ちっぱなしで踊りっぱなしなのだ。
カーニバルは参加する人だけではなく、
観客でさえも覚悟を持って望まなくてはならない、
耐久パレードなのだ。


なんてことを考えていてもパレードが始まれば
すぐに体は音楽に反応しステップを踏んでしまう。
それがサンバというもので、これがブラジルなのだ。
カーニバルという名を借りた、
ブラジル人の欲求爆発の舞台。それがリオのカーニバルだ。



4度、立って座り、時刻も深夜3時を回ったころ。

会場の雰囲気が一気に変わり始めた。

誰もが期待に胸を膨らませた表情をし始め、
初めての参加者は何が起こるのか戸惑いの表情を見せながら、
会場の雰囲気に同化していく。



「ベイジャ・フロー」



この名前はリオっ子ならば誰でも知っている。
そしてこの会場にいるサンバ好き、祭り好きならば同じくだ。


ベイジャ・フロー。
その生きた伝説のグループはなんとこのリオのカーニバルで、
5年連続優勝の驚くべき実績を持っている。

誰もがその事実を知り、
それを確かめに今日ここにいるといっても過言ではない。
それ程に会場の雰囲気は先ほどまでの4チームの前とは、
明らかに異なる様相を呈していた。




「次のチームは・・・ベイジャ・フロー!!!!!!」


そのアナウンスが流れると、
会場は一気に拍手と歓声に包まれた。
これぞ王者の力なのだろう、試合の前から勝負は決まっているようなものだった。

いつものようにチームの歌を会場全体で歌う。
その声も今までとは何倍も違う。

そしてその歓声の中、王者ベイジャ・フローのパレードは始まった。


これは・・・レベルが違い過ぎる。


誰もが一度見ればわかるだろう。
それほどまでに王者のパレードは堂々と華やかさに満ちている。


何千人もの踊り子たちの衣装。
それ一つとっても一人ひとりが豪華で華やかな、
大きな見栄えの良いドレスに身を包み、
パレードの道を埋め尽くすように煌々と舞っている。

その舞台の仕掛けや精巧さも、
まるでSFの舞台監督が作ったもののように、
機械仕掛けの人形の手の動き一つ一つ、
吹き上げられる水と香り、
すべてが完成された舞台で、
他を寄せ付けない圧倒的な美しさを持っていた。

まぁ、冷静に見ればなんとなくお金の匂いがする、
王者の貫禄ではあったのだけれど、
そんなことを差し置いて、
観客全員に「THE リオ」を感じさせるには十分だったと思う。

僕も誰も、全ての人々がそのパレードに熱狂し、
ステップを踏み拍手を送った。


僕はその瞬間、この日本の反対側の狂気の祭りに、
いまここにいる奇跡に驚き、旅に感謝をした。

僕の旅、一日、一日が今日ここにたどり着くための日々だったのかもしれない。




朝、6時。

すっかり白じみ始めた空の下、パレードは終わりを告げた。

早朝まで踊り明かしたにもかかわらず、
人々の表情には笑みがある。

それはきっと僕の顔にも描かれているに違いない。


帰り道、衣装を脱ぎ捨てた踊り子たちが、
パレードの成功を祝し、乾杯を繰り返す。
道端に転がった色とりどりの衣装をよそに、
早朝からの祝賀会は始まりを告げたばかりだ。


サンバ?踊るだけじゃものたらねーぜ。
酒、女、ついでに金もあればいい。

これがブラジルって奴だ。
なにせ明日も明後日もカーニバルは続くのだ。


ダンス!ダンス!ダンス!

浮世のカーニバルは続く。





now, I'm in Brazil !!!!!

2009年2月21日土曜日

世界一周(37)ブラジル/路上のカーニバル















DATE:2009/02/21 Brazil - Rio de Janeiro -


・・・何時だ?いま。

薄くなり始めた光はどうやら夕方の風景のようだった。



寝すぎじゃん。俺。

昨日、カーニバル初日でテンションがあがり過ぎたのか、
結局1時ごろまで踊り続けてしまい、さらにその後にビールを飲んだくれたため、
今日動き出したのはもう夕方になってからだった。

昼ごろに何かを食べに出かけた記憶はあるが、
そのまま直ぐに帰宅しまたビールを飲みながら寝てしまったようだ。
まだ飲みかけのビールの缶がベッドの横のテーブルにぬるま湯のような温度で置かれたていた。


まぁね。祭りだしね。と言い訳じみた言葉を頭の中で繰り返す。
祭りというのはなんとも便利な免罪符のような言葉のようだ。

目が覚めたときから既に街は祭りの続きを始めているようで、
ドン、ドンと腹に響く重低音がさほど遠くない距離から聞こえて来ている。

僕らもそれに遅れてはならぬ、とシャワーを浴び着替えをしてから街へと繰り出した。



昨日同様にゴミが散乱する道を音鳴る方へ歩いていく。

面白いのがゴミの中でも空き缶だけがなくなっている事で、
見渡してみると祭りの中ゴミ拾いに駆け回る人たちがいる。

この人々は普段から空き缶やペットボトルを回収する仕事をしている人で、
どうやら彼らにとってもカーニバルはかき入れ時のようであった。

路上で暮らす彼らのような人々でもカーニバルでは踊る人もいるし、
こうやって仕事をこなす人々もいる。
それでも面白いのが空き缶を拾う人々が音楽に合わせリズムを取っていることで、
たまに仕事そっちのけで空き缶のごっそり入った袋を持ちながらステップを踏んでいたりする。
どんな仕事でもカーニバルの熱には勝てないのかもしれない。



音鳴る方へ。音鳴る方へ。

いつの間にか昨日行ったライブ会場へとたどり着いてしまったが、
今日はさらに奥の方からも音が聞こえてくる。

寝起きでほとんど何も食べていなかったこともあり、
食料探索がてらそちらの方へ向かっていくと。。。


路上パレード!!

向こうの方からずらりと並んだ大群がこちらの方へ押し寄せてくるのが見える。
その後方からは音楽が鳴り響き、4車線ある車道は全て彼らで埋め尽くされていた。

パレードと言うよりはなんだかデモ行進のようだが、
それでも参加者は思い思いに楽しみながら歩いている。

僕らは露天で買ったおいしい肉の串焼きを片手にそれを見送る。

観光客達はパレードの列に後ろから付いていく者もあれば、
思い思いにぶらぶらと道を歩いている人もいる。

その姿は昨日よりもさらにグレードアップしていて、ほとんど仮装大賞。

ネコキャラもいれば、仮面舞踏会のような人もいるし、
中にはダンボールで作ったテレビカメラを担いでレポーター気取りの奴もいる。

パレードの参加者も見物人もみながみなそれぞれに祭りを楽しんでいるのだ。


ライブ会場で踊ってくるというマサミと別行動をとり、
僕はそのままパレードの行列を奥に奥に進んでいく。

どうやら町内対抗のようなこの路上パレードはいくつものチームが次々とやってくるようだ。

パレードの切れ目には見物人がうろうろと歩き、
さらにその奥の方からは別のパレードのグループがゆっくりと向かってくる。


しかしこのパレード。

本当に無料の路上パレードなのかといった気合の入り様。

各チームそれぞれにオレンジや青、白や金といった色とりどりの衣装を身にまとい、
まるで写真で見たリオのパレードのように本物顔負けの装いなのである。

さらに衣装以外にも本物同様に大きな山車が路上をパレードし、
10人以上の踊り子がその舞台の上で観客に踊りを振りまいている。


100人ほどの同じ衣装を着た踊り子達の真ん中には、
羽飾りや大きな旗を持った特別な衣装に身を包んだクイーンやキングが踊り歩く。

サンバクイーンの衣装はもちろん露出度が高いセクシーな衣装で、
さらにさすがにサンバクイーンと言うだけあって綺麗な女性が
高いヒールを履きながらサンバを踊っている。

周りを飾る踊り子の衣装もまたセクシーなもので、
それがなんと小学生ぐらいの子供でさえも着こなしているのだから凄い。
これを小さいころからやっていれば、そりゃ街中を露出度全開で歩く訳だ。

衣装はそれぞれ独自のセルフオーダーのようで、
セクシーを通り越してたまに乳首が見えちゃってる人もいるが、
それは・・・やっぱサービスとしてありがたく受け取っておこう。


踊り子達の人種はさすがブラジル、本当にさまざまだ。
黒人の文化とキリスト教の儀式が結びついて始まったというカーニバルは、
全てのカラーを巻き込んでいまここで1つになっている。

街の人、全員参加といった勢いのパレードは何百メートルも続き、
さらにその奥には待機中のグループが何組もいるのだから路上パレードといっても相当のものだ。
まっすぐな道を練り歩く人たちの笑顔は忘れることの出来ない南米の最初の記念碑となった。



僕はいま興奮の中にいる。
それは僕だけではなくここにいる全ての人が共有する1つの心だった。

踊るアホウに見るアホウ。

そんなこと言わなくてもわかっている。ここに来ればそれがわかるさ。
ほら勝手に体が動くだろ。


果てしなく続くように見えるパレードが世界の全てだった。僕はその中にいた。





そんな夜にもまた、別の物語が続いている。


「ねぇ、テッチャン。わたし、強盗に会った。拳銃見た」

おぃ。おぃ。

合流したマサミが告げたひと言は、ふざけているようだったが本当のようだった。
幸い運良く一緒に居たというブラジル人が助けてくれたようで、
被害は特になかったようだ。


ブラジル。リオの街はカーニバルでも甘くはねーぜって事だ。
浮かれる街の夜の闇ではまた別の世界があるみたいだ。

僕は「ばか」と言い、そっとマサミの頭をなでた。





光が強ければ強いほど、闇もまたその濃さを増す。

僕はいま、リオ・デ・ジャネイロの街にいる。